新生児マススクリーニングガイド対象疾患等診療ガイドライン
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P蛋白T蛋白H蛋白L蛋白951表1■1●●●●1非ケトーシス型高グリシン血症(NKH)構成酵素の略称遺伝子GLDC 非ケトーシス型高グリシン血症(NKH;MIM #605899)は,グリシン開裂酵素(GCS)の活性低下により全身にグリシンが蓄積する先天代謝異常症で常染色体潜性遺伝(劣性遺伝)形式をとる.グリシンは神経伝達物質として働くため,グリシンの蓄積は中枢神経症状を引き起こす.典型的には,生後数日以内に意識障害,無呼吸となり,呼吸管理を必要とすることが多いため,新生児集中治療室(NICU)で治療される(新生児型ないし古典型).呼吸管理を1〜3週間継続すると次第に自発呼吸が戻り,呼吸管理から離脱できることが多い.精神運動発達はほとんど認められず,重度の心身障害や難治性てんかんなどを残すことが多い.診断には髄液/血漿グリシン比,遺伝学的検査が有用である.有効な治療法は確立していない.わが国の指定難病(告示番号321)となっている. GCSはグリシンに対するおもな生理的分解経路であり,P・T・H・L蛋白の4つの構成酵素か1 臨床病型 新生児型(neonatal)NKH〔重症型(severe)NKH,古典型(classical)NKHともよばれる)と遅発型(late■onset)NKH〔軽症型(attenuated)NKHともよばれる〕に分けられる.NKH全体の85%が新生児型(重症型),15%が遅発型(軽症らなる複合酵素である(表1■1).GCSは脳・肝・腎などのミトコンドリアに存在し,グリシンを二酸化炭素とアンモニアへ分解する.中枢神経系においてグリシンはNMDA型グルタミン酸受容体のコアゴニストと抑制性グリシン受容体のアゴニストとして作用する.脳内グリシン濃度の上昇は,NMDA型グルタミン酸受容体の過剰興奮により難治性てんかんを起こす.また,抑制性グリシン受容体の過剰興奮により,無呼吸,全身性の低緊張,吃逆を起こす,と考えられている.1 疫学 欧米では,一般住民ゲノム・データベース(ExAC)を用いて■■■■または■■■変異のヘテロ接合体頻度を検索し,NKH保因者頻度を1/138としている.したがって,NKH発症頻度は1/76,000出生と推定される1).わが国におけるNKHの報告は,年間1〜2例程度である.型)であり,重症度は残存酵素活性の程度に依存すると考えられている2).また新生児期に重症型と同様のエピソードを呈するが,臨床症状や髄液・血清のグリシン濃度が正常化する一過性高グリシン血症というまれな亜型も知られている3).aminomethyltransferasehydrogen carrier proteindihydrolipoamide dehydrogenase構成酵素glycine decarboxylaseMIM染色体座位エクソン数238300AMT238310GCSH605899GCSL2383319p24253p2116q247q3114疾患概要臨床症状と病型

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