新生児マススクリーニングガイド対象疾患等診療ガイドライン
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b(0,+)ATA型B型AB型表3■2Rosenbergらによる古典的な病型分類Ⅰ型図3■2シスチン輸送系糸球体毛細血管より尿細管腔へ濾過されたCys(システイン)は近位尿細管上皮の頂側膜にあるSLC3A1とSLC7A9により構成されるシスチン輸送系(ヘテロ2量体)により細胞内へ入る.Cys⊖Cys(シスチン)へ変換された後,側底膜より血液内へ移行する.表3■1病因遺伝子に基づく病型分類血液内へSLC3A1⊘SLC3A1SLC7A9⊘SLC7A9SLC3A1⊘SLC7A9rBAT⊘b(0,+)ATノ酸にはシスチンと共有する経路とは別の代替輸送機構が存在するため,臨床的問題は発生しない.これらのアミノ酸はシスチンよりも尿への溶解度が高いため,これらの排泄量が増加しても結晶や結石の形成をきたすことはない.これらの物質の吸収(およびシスチンの吸収)は小腸においても減少する.1 代謝経路 図3■1および図3■2参照.1 臨床病型シスチン輸送系および二塩基性アミノ酸輸送系の障害の程度によりⅠ〜Ⅲ型に分類されてきたが8,9),3つの病型間での臨床症状の差異はなく病型診断の有用性は乏しかった.最近は責任遺伝子と病態との関連が明らかになり遺伝子型による分類が用いられている.2 疫学 近位尿細管における遺伝性的異常により2万人に1人の頻度で発症する.尿路結石全体の1〜2%を占めるが,小児では6〜8%と頻度が上昇し,遺伝性結石症のなかでは最多となる7).・A型:■■■■■■の両アリルに変異を有する.・B型:■■■■■■の両アリルに変異を有する.・ AB型:■■■■■■と■■■■■■の片方のアリルにそれぞれ変異を有する.この2つの病因遺伝子に基づいた新たな病型分類と従前の分類との対応も提案され,遺伝子型による分類が用いられることが多い10)(表3■1). 古典的なⅠ〜Ⅲ型の病型分類は表3■2とその説明を参照されたい.2 主要症状および臨床所見 症状は血尿,腹痛,腰背部痛,尿路感染症状が中心である.尿路閉塞により腎不全をきたすことがある.乳児期は無症状で経過することが多く,通常10〜30歳で発現する.30歳未満で上記の尿路結石を示唆する症状があり,家族歴がある場合に本症を疑う.また,診断技術の進歩により乳幼児や学童期に診断される症例も報告されている.1 一般血液・尿検査 尿路閉塞による腎機能障害が出現しない限り,一般血液検査での特徴的な所見はない.尿沈渣ではシスチン結晶は黄褐色の六方晶である.酸性側でシスチンの可溶性が低下し,尿pH 7では300 mg/L(1,200μM)以上の濃度となると結石が形成される. 1人の患者で尿路結石の出現は一生の間に50%以上の確率であり,3/4は両側性である11).成人症例の約50%で高血圧症の合併があり,推算糸球体濾過量(eGFR)から正常腎機能を維持していると判断されるのは25%にすぎず,多くが慢性腎臓病(CKD)stage 2あるいは3の腎機能障害を有する.成人症例の長期観察では心血管障害や腎不全に由来する症状を呈するリスクが極めて高い12).2 画像診断 尿管結石が特徴的であり,腎盂または膀胱に結石が形成される.シスチン結石は放射線透過性が不良であるため,単純X線では結石陰影の確認が困難なことがある.サンゴ状結石の場合が多く超音波(エコー)やCTによる検査が結石の性状を明らかにする.rBAT遺伝形式ヘテロのシスチン排泄(mmol⊘gCr)ヘテロのシスチン腸管吸収2塩基性アミノ酸の腸管吸収経口負荷と血中濃度Ⅰ型:小腸からのリシン,アルギニン,シスチンの吸収が完全に障害されている.Ⅱ型:小腸におけるシスチンの吸収がわずかに認めるが,リシン,アルギニンの吸収はみられない.Ⅲ型:小腸での二塩基性アミノ酸吸収はわずかに低下しているが,アミノ酸を経口負荷すると血中濃度が上昇する点がⅠ,Ⅱ型と異なる.本症は常染色体潜性遺伝(劣性遺伝)であるが,Ⅰ型ではヘテロ接合体の尿中アミノ酸排泄は正常である一方,Ⅱ,Ⅲ型ではヘテロでもシスチンなどの排泄が増加している.病因遺伝子蛋白(トランスポーター)病型常染色体潜性(劣性)不完全顕性(優性)不完全顕性(優性)正常(0~100)中等量(990~1,740)少量(100~600)上昇しない従来の分類(表3■2参照)非Ⅰ型(86%),Ⅰ型(14%)Ⅱ型(非Ⅰ型)正常障害障害障害軽度上昇Ⅰ型非Ⅰ型Ⅲ型(非Ⅰ型)正常軽度障害遅延して上昇3 シスチン尿症23糸球体毛細血管Cys〈尿細管腔〉CysSLC7A9近位尿細管上皮細胞SLC3A1Cys-CysCys診断の基準参考となる検査所見

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