新生児マススクリーニングガイド対象疾患等診療ガイドライン
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図3■3シスチン尿症の診断フローチャート尿路結石症状を認めたら,尿中のシスチン結晶の検索とX線や超音波(エコー)による画像診断を行う.結石の家族歴や既往を問診した後,尿ニトルプシド試験および尿アミノ酸分析により診断を確定する.1 尿化学的定性反応*** 尿中シスチンの過剰はニトロプルシド試験により検出される(感度72%,特異度95%)13).2 尿アミノ酸分析* 診断に最も重要であり,シスチンおよび二塩基性アミノ酸(リシン,アルギニン,オルニチン)の排泄増多を認める.確定診断は,400 mg/日(正常では30 mg/日以下)以上のシスチン排泄の増加によりなされる.ヘテロ接合体は30〜400 mg/日,また正常は30 mg/日以下である.小児の随時尿で判定する場合は1,000μmol/gCr以上のシスチン排泄を確定診断の基準とする.ヘテロ接合体では100〜999μmol/gCr(正常では100未満)である13).ただし,尿中シスチン濃度がシスチン排泄量を正確に反映しないことに注意を要する.3 経口負荷試験*** 小腸でのシスチンおよび二塩基性アミノ酸の吸収障害を認める. 尿路結石をきたす疾患すべてが鑑別の対象となる20).結石の種類ではシュウ酸カルシウムが最も多く,次が尿酸であり,シスチンは全体の約2%を占めるにすぎない.ただし,小児では6〜8%と頻度高く,鑑別の上位にあがる.カルシウム結石の危険因子は遺伝性高カルシウム尿症であり,血中カルシウムは正常であるが,尿中カルシウム排1 疑診例・ 30歳未満で尿路結石を示唆する症状か家族歴があり,ニトロプルシド試験あるいは尿アミノ酸分析で,シスチンおよび二塩基性アミノ酸の4 血液アミノ酸分析* 通常の蛋白摂取量で血中アミノ酸値は正常範囲である.おそらく別の吸収経路が働くか,ジペプチドの吸収によるものと考えられる.5 シスチンの腎クリアランス*症例によって様々である.また,生後1年以内では腎尿細管機能が未熟であるため,ヘテロ接合体とホモ接合体の鑑別がむずかしい場合がある.6 遺伝子解析***14■17)シスチントランスポーターを構成する2つの遺伝子(■■■■■■,■■■■■■)の変異解析を行う.日本人ではB型がA型の4倍以上と著明に多い18).B型あるいはAB型のヘテロ接合体では,尿中へのシスチンおよび二塩基性アミノ酸の排泄は■■■■■■の変異の重症度と相関する.特に■■■■■■のP482L変異は日本人に頻度が高く,強力にトランスポーター機能を抑制するため,ヘテロ接合体でも発症することがある18,19).泄が増加している.尿酸結石は,プリン体過剰摂取による高尿酸尿症が原因となることが多い.シスチン尿症を伴う疾患として■■■■■■が位置する2p21領域の隣接遺伝子症候群があり,2p21欠失,hypotonia■cystinuria syndrome(HCS),atypical HCSがある21).排泄増多を認めた場合,疑診とする.・ Ⅱ,Ⅲ型(遺伝子型ではB型あるいはAB型)は不完全な常染色体顕性遺伝(優性遺伝)し,保因者でもアミノ酸尿を認めるため,疑診例となりうる.また,2歳以下は腎尿細管機能の発達を考慮し,慎重に診断する必要がある.2 確定診断例・ 疑診例のうち,尿アミノ酸分析で,400 mg/日(正常では30 mg/日以下)以上のシスチン排泄の増加があった場合,確定診断例とする.ヘテ 指定難病ではなく,臨床的に重症度を分類する 本症は新生児マススクリーニング(NBS)の対1 確定診断 尿路結石を示唆する症状(血尿,腹痛,腰背部痛,尿路感染)と家族歴があり,30歳未満で症状を繰り返している場合に強く疑い,以下の診断をロ接合体は30〜400 mg/日程度のシスチン排泄である.特殊検査の1〜6も参考になり,病型診断が可能となる.・ 発症前型:症状がなく,尿アミノ酸分析で,シスチンおよび二塩基性アミノ酸の確定診断レベルの排泄増多を認めた場合.区分はない.象疾患ではない.行う.2 急性期の検査① 画像検査:単純X線撮影やCTで比較的淡い結石陰影を認める.超音波(エコー)でも検出さ3 シスチン尿症45結石の性状評価(尿沈渣,画像診断)詳細な問診(家族歴,結石の既往など)尿ニトロプルシド試験尿中シスチンおよび二塩基性アミノ酸排泄尿路結石症状YesYesシスチン尿症NoNo他の尿路結石症他の尿路結石症診断の根拠となる特殊検査鑑別診断診断基準(図3■3)重症度分類新生児マススクリーニング(NBS)で疑われた場合急性発作で発症した場合の診療

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