新生児マススクリーニングガイド対象疾患等診療ガイドライン
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BB67れるが,他の結石との鑑別はできない.② 尿検査:特徴的な六角形のシスチン結晶を認める.③ ニトロプルシド反応:化学的定性反応として今でも有用である.④ 尿中アミノ酸分析:シスチンおよび二塩基性アミノ酸の排泄増多のパターンを示す. 一次的な治療は,十分な水分摂取と薬物療法による尿アルカリ化による結石形成の抑制である.塩分や蛋白の摂取制限も必要となることがある.小児期に発症した症例のみならず,成人期症例も生涯にわたって結石形成の抑制が必要である.結石の再発や増大を繰り返す症例では,二次的な治療としてキレート薬による結石溶解療法が行われる.メルカプトプロピオニルグリシンとペニシラミンが代表的な薬剤であるが,成人期にわたる長期投与となるので,副作用発現に注意が必要である.外科的に砕石術も行われるが,安全性と結石が完全に除去される可能性を考慮して行う.キレート薬による薬物療法や外科治療の対象は成人症例が中心となり,3〜6か月ごとの定期的な観察により適切な治療法の選択を行う.1 食事療法B 標準的な体重を維持し,塩分と蛋白摂取を控え,果実や野菜を積極的に摂取することにより食事療法の効果が期待できる.尿中pHと体重は逆相関にあり,肥満度が増加するほど結石を形成しやすいので,体重のコントロールが重要である.食塩の摂取を1日6 g以下(ナトリウムとして2.5 g以下)とするとシスチンの排泄も減る.積極的な低メチオニン食は患者が受け入れにくく,効果が上がらない.むしろ動物性蛋白食品やナッツ類を制限するメニューにより,メチオニンとシスチンの摂取が低下する.1日蛋白摂取量が20 g以下になるような極端な低蛋白食はむしろ有害であり,動物性蛋白を60%以下にするような構成比(最低40%は植物性蛋白)としたメニューを立案3 急性期の治療方針 尿路結石症による■痛,尿路閉塞,尿路感染症に対症的処置が必要であり,鎮痛薬投与,カテーテル留置,抗菌薬投与などを行う.急性期の症状が緩和されたら結石除去を内科的あるいは外科的に行う(「慢性期の管理」を参照).し,食事日誌をつける.ただし小児ではシスチン制限や低蛋白食は成長への影響を考慮し勧められない22).2 薬物療法❶ 溶解療法シスチンの溶解度は300 mg/L(pH 7.0)であり,1日1,400 mgのシスチンを排泄させるとしたら5 Lもの尿量が必要となる.現実的には尿量が3〜4 L/日(小児23,24)では最低2 L/日または2 L/1.73 m2)となるのに十分なだけの水分摂取をさせ,尿中シスチン濃度を低下させることにより腎毒性を低減させることができる.また,尿pHが低下する夜間における水分補給が特に重要である20). 重炭酸ナトリウム1 mEq/kg,経口,1日2回または1日3回とアセタゾラミド5 mg/kg(最大250 mg),経口,就寝時によりpH 7.0〜7.5の尿アルカリ化を行えば,シスチンの溶解度を有意に上昇させることができる.また,クエン酸製剤(商品名ウラリット®)として1日2〜6 g内服も有効である.尿の過度のアルカリ化は,リン酸カルシウム結石を形成する可能性があり,注意を要する.❷ キレート薬による薬物療法(1)チオプロニン(チオラ®)*25)溶解度の高いシステイン■チオプロニン複合体が生成されて溶解度が50倍となり,シスチン濃度を低下させる.1日量として100 mgから開始し,1日4回(食後および就寝前)に服用する.最大量として40 mg/kg/日(最大量2,000 mg/日)である.黄疸などの重篤な副作用が出現する可能性があり,定期的な肝機能検査が欠かせない.小児シスチン尿症患者に1日40 mg/kg以上投与した場合,ネフローゼ症候群や蛋白尿などの副作用が現れるとの報告がある.(2)D⊖ペニシラミン**22)国内では本疾患に保険認可されていないため,適用外使用となる.ペニシラミン(7.5 mg/kg,1日4回,児童では250〜1,000 mg,経口,1日4回)が有効であるが,その中毒性のために,使用には制限がある.全患者の約半数で発熱,発疹,関節痛などの中毒症状が発現し,また頻度は低くなるものの,ネフローゼ症候群,汎血球減少症,全身性エリテマトーデス様反応などを発症することもある.(3)カプトプリル**22)カプトプリル(0.3 mg/kg,経口,1日3回)はペニシラミンほど有効ではないが,中毒性ははるかに低い.チオール■システインジスルフィド複合体を形成する.高血圧合併例では使用する価値がある. 上記の3つの薬剤は副反応に注意が必要であり,「①溶解療法」が有効でない場合にのみ使用すべきである.3 手術療法C 一般に経皮的腎砕石術(PCNL),体外衝撃波結石破砕治療(ESWL),経尿道的結石破砕術(TUL)は成人だけでなく,小児の上部尿路結石に対する低侵襲治療として推奨されている26)B.シスチン尿症の腎結石に対しても溶解療法と平行して実施されているが,破砕困難な症例も多く認める27,28).シスチン結石に対する溶解療法ある 1 一般的評価 内科的治療により結石のコントロールを行う際の指標として24時間の尿中シスチン排泄量と尿PHを用いるC. 小児期は診断後,1〜2か月に1回の外来受診にいは外科的治療法単独での治療が困難な症例では両者を組み合わせた治療の導入が必要であるC.・ 小児では結石のサイズと位置により手技が選択される.・ 20 mm以下:ESWLあるいはTULが第一選択となる.・ 20 mm超:ESWLあるいはPCNLが選択の範疇に入る.・ 巨大・サンゴ状腎結石ではTUL+PCNLや腹腔鏡下腎盂切石術が選択され,小児でも安全に施行できる.尿管結石は比較的排泄されやすい傾向があり,内科的治療を十分に行ったうえ,■痛,水腎症,閉塞性腎盂腎炎の合併により外科的治療の適応を検討する.DJステントの早期に留置による腎機能保護も大切となる.しかし,ステントにはシスチン結石が付着しやすく,必要最低限の日数とする29)C.4 結石再発時の対応 急性期の治療方針で述べたように,尿路結石症による■痛,尿路閉塞,尿路感染症に対症的処置を速やかに行う.特に梅雨期や夏は,発汗増加による脱水がきっかけになるので,補液を十分に行う.5 移植医療 水腎症や閉塞性腎盂腎炎の進行により末期腎不全に至った症例では,腎移植が適応となり,治療効果も確認されているが,実施された症例は少ない20).て十分な水分摂取と服薬コンプライアンスを確認する.検尿にて尿のアルカリ化と低比重を確認するC. 青年〜成人期では年3〜4回の外来受診では,早朝尿の尿比重・シスチン結晶の有無および尿中シスチン濃度を測定する.また,X線や超音波検査3 シスチン尿症慢性期の管理フォローアップ指針

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