新生児マススクリーニングガイド対象疾患等診療ガイドライン
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が多い.p.R320H変異はアレル頻度16%で最も高頻度である.■■■■と異なり,コピー数多型は少ない.遺伝子型と表現型の相関はある程度確認されているが,特にミスセンスバリアントでは同じ遺伝子型でも表現型が異なる症例も報告されているため,注意が必要である6,7).3 酵素活性 生検肝を用いたGCS酵素活性測定は,放射性同位元素で標識された(1■14C)グリシンを用いた脱炭酸法で測定する8).呼気試験は安定同位体(1■13C)グリシンを経口投与し,肝臓のGCSにより脱炭酸されて二酸化炭素として呼気中に排出される13CO2を測定する9).どちらの検査も,現在わが国に実施可能な施設はない. 新生児型NKHと同様の症状を起こしうる高グリシン血症をきたす疾患として,PAなどの有機酸代謝異常症があげられる.ただし有機酸代謝異常症ではケトーシスを伴い,髄液中のグリシンが正常であることから鑑別できる.バルプロ酸内服,X連鎖性コバラミン代謝異常症(HCFC1)などではケトーシスを欠く高グリシン血症をきたしうる13).有機酸やバルプロ酸は肝臓のGCSを阻害することで高グリシン血症の原因となる. また近年,GCS活性低下・血漿グリシン濃度上昇・髄液/血漿グリシン濃度比の軽度上昇をきたA.新生児型 下の1)〜4)の基準により診断する.1)新生児期に次の1つ以上の所見を呈する・意識障害(多くは呼吸障害を伴う昏睡)・筋緊張低下・けいれん重積・ 脳波検査でバースト・サプレッション(burst■4 頭部MRI検査 脳梁菲薄化〜無形成・脳室拡大・小脳低形成・髄■化遅延・脳室拡大などを認める.重度の脳奇形(脳梁無形成,水頭症を伴う脳室内囊胞)を呈する場合は,新生児型の可能性が極めて高い10).特徴的な所みとして拡散制限の有無が注目されており,NKHでは3か月以内に内包後脚・脳幹前部・後被蓋核・小脳で認める.低酸素脳症では内包後脚などの拡散制限は起こさないため鑑別の一助となる.また一過性高グリシン血症では拡散制限は呈さない.ただし拡散制限は3か月以降に徐々に非顕在化していく11,12).脳梁のサイズと発育速度は,神経学的予後や病型の決定に有用とされている.頭部MRS検査でグリシンのピーク上昇も参考になるが,出血でも上昇しうるため注意する.した症例で,リポ酸や鉄硫黄クラスター関連の異常が報告されている14,15).鉄硫黄クラスターはリポ酸代謝に関係し,H蛋白は補欠分子としてリポ酸を必要とするため,GCSの活性低下が起こると考えられている.リポ酸は,ミトコンドリア内のピルビン酸脱水素酵素複合体や分枝鎖α■ケト酸脱水素酵素など様々な酵素複合体の補欠分子としても働く.リポ酸や鉄硫黄クラスター関連の異常症例の症状は,NKHの典型例とは異なり,退行や視神経萎縮などのミトコンドリア病でみられるような症状を有する.suppression)またはヒプスアリスミア(hypsar-rhythmia)を認める2)尿有機酸分析で異常を認めない3) 髄液グリシン濃度が18μmol/L以上,かつ髄液/血漿グリシン濃度比が0.07以上4) 遺伝子変異検索で,■■■■,■■■,■■■■いずれかの遺伝子に病因と考えられる変異を認1 非ケトーシス型高グリシン血症(NKH)232 症状および臨床所見 中枢神経症状のみを呈し,他の臓器障害による症状を認めないことが,重症型,軽症型に共通した特徴である.❶ 新生児型生後数日以内に発症し,NICUで診断されることが多い.初発症状は,哺乳力低下,吃逆,低緊張で,急速に無呼吸,昏睡などの意識障害へと進行し,呼吸管理が必要になる.けいれんを伴うことが多く,通常の抗けいれん薬に反応が乏しい.自発呼吸は,生後1〜3週間で戻ることが多く,抜 一般的な血算・生化学検査などでは異常を認めない.1 尿中有機酸分析 NKHでは,尿有機酸分析で異常所見を認めない.高グリシン血症を伴うプロピオン酸血症(PA)やメチルマロン酸血症(MMA)などの有機酸代謝異常症を鑑別診断するために有用である.2 脳波 新生児型(重症型)では,新生児期にヒプスア1 アミノ酸分析 髄液/血漿グリシン濃度比の上昇が特徴的である.血中グリシン濃度は,有機酸血症でも上昇するため,髄液グリシン濃度も同時に測定する.本症では,髄液グリシン濃度も著明(新生児型では,正常の10倍以上)に上昇し,有機酸血症では髄液グリシン濃度の上昇が軽度であることから,髄液/血漿グリシン比が診断に有用である.髄液/血漿グリシン濃度比が高くなるほど重症となる傾向がある.新生児型症例の髄液/血漿グリシン比は,通常0.1を超える(基準値0.03未満).一方,遅発管が可能となる.精神運動発達はほとんど認めず,重度の心身障害を残す.てんかんは,難治性で抗けいれん薬に抵抗性である.❷ 遅発型新生児型よりもGCSの残存活性が存在する場合,新生児型よりも軽症で緩徐な経過を辿る.新生児期に筋緊張低下や無呼吸といった症状を示さず,多くは乳児期(特に4か月以降)に筋緊張低下や精神運動発達の遅れで発症する.知的障害を伴い,てんかんをもつことが多いが,てんかん発作を全く認めない症例も存在する.独歩を獲得する成人症例の報告もある4).リスミア(hypsarrhythmia)やバースト・サプレッションパターン(burst■suppression pattern)を呈する.ほかに,hypsarrhythmiaやburst■suppression patternを呈する疾患として,新生児型副腎白質ジストロフィ,MTHFR欠損症,シトルリン血症,モリブデン補酵素欠損症,などの先天代謝異常症や,大田原症候群,dentato■olivarydysplasia,Aicardi症候群,片側巨脳症などの疾患でも認められるので鑑別疾患となる.型では0.03〜0.1程度の上昇のことが多い2).2 遺伝学的検査 新生児型症例の80%は■■■■遺伝子に,20%は■■■遺伝子に変異をもつ1).遅発型症例においても■■■■と■■■遺伝子変異が報告されている.■■■■変異の50%はミスセンス変異,10%はナンセンス変異,20%はエクソン単位の欠失であるコピー数多型からなる5).これは,■■■■遺伝子のイントロンには■■■配列が多く(特にイントロン2),相同組換えによると考えられる.■■■変異の70%はミスセンスで,recurrent mutation参考となる検査所見診断の根拠となる特殊検査鑑別疾患診断基準

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