新生児マススクリーニングガイド対象疾患等診療ガイドライン
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4) Dinopoulos A, et al.:Glycine decarboxylase muta-tions:a distinctive phenotype of nonketotic hypergly-cinemia in adults. Neurology 2005;64:1255■1257.5) Kanno J, et al.:Genomic deletion within GLDC is amajor cause of non■ketotic hyperglycinaemia. J MedGenet 2007;44:e69.6) Swanson MA, et al.:Biochemical and molecular predic-tors for prognosis in nonketotic hyperglycinemia. AnnNeurol 2015;78, 606■618.7) Coughlin CR. et al.:The genetic basis of classic nonke-totic hyperglycinemia due to mutations in GLDC andAMT. Genet Med 2017;19:104■111.める〈疑診例〉・1)〜3)の基準を満たす〈確診例〉・1)〜4)のすべての基準を満たすB.乳児型 下の1)〜4)の基準により診断する.1) 乳児期以降に次のいずれかの症状を示す(新生児期は,原則無症状)・筋緊張低下・けいれん グリシンを低下させる目的として安息香酸,またNMDA受容体の阻害作用を期待してデキストロメトルファン,難治性けいれんに対し抗てんかん薬やケトン食(KD)が用いられている.ただしこれらの治療を行っても,現時点では新生児型NKHに対する精神遅滞や痙性の予防はむずかしい.1 安息香酸ナトリウム***B ベンゾイルCoAに代謝され,グリシンと抱合されて馬尿酸となり尿中に排泄されるためグリシンを低下させる.安息香酸ナトリウムとして250(500まで増量可能)mg/kg/日分3で用いる.安息香酸投与により血中グリシン濃度の正常化は可能であることが多いが,髄液グリシン濃度の正常化は困難である.2 デキストロメトルファン**B 弱いNMDA受容体拮抗作用をもつため,古くから用いられている.5〜15 mg/kg/日分3で用いる.新生児型の場合,脳波所見の改善を認めることも多いが,長期予後の改善効果は未確立である16).遅発型では長期予後改善の報告もあるが, 急性期を過ぎて自発呼吸が安定すれば,外来・精神遅滞・行動異常(多動,自閉症様症状など)2)尿有機酸分析で異常を認めない3) 髄液グリシン濃度が15μmol/L以上であり,かつ髄液/血漿グリシン濃度比が0.03以上4) 遺伝子変異検索で,■■■■,■■■,■■■■いずれかの遺伝子に病因と考えられる変異を認める〈疑診例〉・1)〜3)の基準を満たす〈確診例〉・1)〜4)のすべての基準を満たす遺伝子型や治療開始時期が関係するとされる17).3 抗てんかん薬C NKHに合併するてんかんは難治性であることが多く,抗けいれん薬に抵抗性を示すことが多い.ミトコンドリア障害を起こしやすいものはバルプロ酸,フェニトイン,カルバマゼピン,フェノバルビタールなどは基本的に避け,ミトコンドリアに影響しにくい,レベチラセタム,トピラマート,ラコサミドなどを用いる18).バルプロ酸は,GCS系を阻害することが知られており,てんかんのコントロールが悪化した症例も報告されている19).4 ケトン食(KD)C 近年難治性てんかんに対する効果が注目されているが,NKHに導入して臨床的に反応を認めた報告がある20,21).KDはγ■アミノ酪酸(GABA)産生を亢進させ,GABA作動性の抑制系を増強し,ニューロンにおける膜電位安定化による発作閾値上昇に寄与することで抗発作作用を起こしているのではと考えられているが,KDの作用機序は多岐にわたるため詳細は不明である.フォローが可能となる.1 一般的評価と栄養学的評価・身長,体重測定・ 血漿アミノ酸分析(目標グリシン濃度120〜300μM)・ 血算や生化学検査(安息香酸ナトリウムの長期使用の場合,定期的な血中カルニチン濃度測定を含める)1 食事療法を含めた治療の継続 新生児型において,医療的ケアの進歩により長期生存例が増えており,重度の精神遅滞をもちながら成人を迎える症例もみられているため,継続的な療育と医療的ケアが必要になる. 遅発型の場合は,生命予後は新生児型に比べてよいため,トランジションを含めた成人期のケアがより重要になる.てんかん・精神遅滞・発達障害をしばしば合併するため,小児神経科医・小児精神科医のみならず,脳神経内科医や精神科医とも連携し,小児期から成人期までスムーズなフォローアップが必要である.就業が可能であった症例も報告されている8).2 飲酒 NKHにおける飲酒については不明だが,エタノールは活性酸素を発生させてミトコンドリア障害を起こすとされているため避けるのが望ましい22).3 運動 厳密な制限は必要ないが,合併症の悪化には留意する.4 妊娠と出産 現在のところ,妊娠・出産に至ったNKHの症例は知られていない.2 神経学的評価・ 精神運動発達(乳児期は3か月に1回,それ以降は年1回)・ 脳波検査(乳児期〜3歳まで6か月に1回,それ以降は1年に1回)3 その他・頭部MRI検査(年1回)5 医療費の問題 本疾患は小児慢性特定疾病および指定難病の対象疾病であり,一定の要件を満たした場合の医療費負担は自己負担上限額が定められている.併存症の有無や程度によっては,自立支援医療制度・身体障害者手帳・療育手帳など,他の助成制度を利用できることがある.1) Coughlin CR 2nd, et al.:The genetic basis of classicnonketotic hyperglycinemia due to mutations in GLDCand AMT. Genet Med 2017;19:104■111.2) Swanson MA, et al.:Biochemical and molecular predic-tors for prognosis in nonketotic hyperglycinemia. AnnNeurol 2015;78:606■618.3) Aliefendio˘glu D, et al.:Transient nonketotic hypergly-cinemia:two case reports and literature review. PediatrNeurol 2003;28:151■155.45文献1 非ケトーシス型高グリシン血症(NKH)治療小児期のフォローアップ指針成人期の問題

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