新生児マススクリーニングガイド対象疾患等診療ガイドライン
32/99

1 症状①運動寡少,仮面様顔貌②体幹筋緊張低下③ 進行性の運動障害,振戦,痙性対麻痺,錐体路徴候④筋強剛⑤ジストニア⑥眼瞼下垂,OGC⑦ 自律神経機能不全(縮瞳,起立性低血圧,発作性被刺激性発汗,流涎過多)⑧新生児/乳幼児期からの進行性脳症2 検査データ*①髄液HVA低値②髄液MHPG低値 現行の新生児マススクリーニング(NBS)で疑1 食事療法 特異的な食事療法はない.2 薬物療法❶ L⊖ドパ*・初期量0.5〜1 mg/kg/日 分2〜6・維持量3〜20 mg/kg/日 分2〜63)ジストニアを主体とする病型では,L■ドパが著効を示し,その効果は永続する.効果・認容性は個人差が大きいため,少量から開始し,副作用に注意しなから漸増する.ジスキネジアを併発する③髄液5■HIAA正常3 遺伝学的検査**TH欠損症の原因遺伝子と考えられている■■の遺伝子解析を行い,2つのアレルに病因となる変異が同定されること.4 診断のカテゴリー❶ 疑診「1.症状」のうち1項目以上かつ「2.検査データ」の①〜③を満たし,鑑別すべき疾患を除外したもの.❷ 確定診断「1.症状」のうち1項目以上かつ「2.検査データ」の①〜③を満たし,鑑別すべき疾患を除外でき,「3.遺伝学的検査」を満たすもの.性期の治療に準じた対応を行う.こともあるが,用量を減じることで改善する.症例により多動,また,バリスムスの発現のため,L■ドパを中止せざるを得ないことがある.しかし,再度,少量で開始,漸増することで効果が得られる. 著明な体幹筋の筋緊張低下とバリスムスを伴った症例には,少量L■ドパ(3 mg/kg/日)とセレギリン(0.5 mg/kg/日)の併用が,有効であったことが報告されている.進行性脳症の病型では有効な治療法はないとされていたが,少量のL■ドパで早期に治療を開始し,その後,慎重に副作用をモニターしながらL■ドパとカルビドパとの合剤(L■ドパとして3〜4 mg/kg/日)で治療し,17年間の経過で運動機能が改善したとの報告もある.しかし,認知機能の改善については限定的であった9). 台湾の患児6例中5例では,L■ドパ単独では,効果は十分ではなく,ビペリデン(0.04〜2.2 mg/kg/日)またはセレギリン(0.07〜0.13 mg/kg/日),またはその両方を併用することで,L■ドパ(4.2〜34.7 mg/kg/日)に反応したとの報告がある4).中国の12例ではレボドパ治療であったが,セレギリンの初期併用は一部の患者で顕著な反応をもたらした.軽症患者の治療効果は常に良好で,治療が神経症状の発症後10年遅れても良好な結果で1 一般的評価と栄養学的評価 めやすとして3か月ごとに血液一般検査,血液生化学検査を行う.1 食事療法を含めた治療の継続 生涯にわたり,上記薬物療法の継続が必要である.特に成人期になり,独立した生活を営む場合に,L■ドパの怠薬により,無動・寡動が起こり,生命の危険性があるため,見守りなど何らかの安全策が必要となる.2 飲酒 一般的に,神経症状に影響を与えるので,推奨はできない.3 運動 基本的に運動制限は不要であり,通常の日常生活に支障が出ることはまれであると思われる.ロコモーションの障害が進行している場合にあったと報告されている6). 台湾の6例の5〜6年の神経学的フォローアップでは,2例の患者がわずかに低い知能指数を示し,3例は精神遅滞を軽度〜中等度を示し,もう1例は呼吸不全によって死亡した.3 Sick dayの対応 発熱や薬物療法の内服が困難な場合は,L■ドパの不足による症状の出現に注意が必要である.4 移植医療 移植医療の適応はない.2 神経学的評価 神経伝達物質の補充量の過不足は,血液生化学検査では評価は困難であり,精神運動発達障害,気分障害などの臨床所見の有無を確認しながら,薬物の投与量を調整する.は,身体機能の維持のための理学療法が推奨される.4 妊娠・出産 妊娠・出産に関する本疾患におけるリスクに関する報告はない.本疾患は常染色体潜性遺伝(劣性遺伝)形式の疾患であり,必要に応じて遺伝カウンセリングを行う.5 医療費の問題本疾患は指定難病には指定されていないため,保険診療内の諸検査および薬物治療については,加入している健康保健が適用される.運動機能の障害の進行に伴う医療的ケアの負担が懸念される.7 チロシン水酸化酵素(TH)欠損症45診断基準新生児マススクリーニング(NBS)で疑われた場合われることはない.急性発作で発症した場合の診療 ジストニアが長時間持続する可能性がある.慢慢性期の管理フォローアップ指針成人期の課題

元のページ  ../index.html#32

このブックを見る