新生児マススクリーニングガイド対象疾患等診療ガイドライン
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8メチルグルタコン酸尿症メチルグルタコン酸尿症Ⅰ型(MGA1)は,メチルグルタコニル■CoAヒドラターゼ(3■MGCH)欠損症2)(MIM #250950)を指す.3■MGCHはロイシン代謝の5段階目に位置する(図8■1).MGA1は常染色体潜性遺伝(劣性遺伝)疾患であり,3■MGCHは9番染色体上の■■■遺伝子によってコードされている3,4). Ⅱ型はBarth症候群(MIM #302060)5)にあたる.X染色体性潜性遺伝(劣性遺伝)疾患であり,カルジオリピンなどのミトコンドリア膜のリン脂質の合成に関与すると考えられているtafazzinという蛋白をコードするXq28に位置する■■■■■■■■遺伝子の突然変異によって引き起こされる6). Ⅲ型はCosteff症候群(Costeff視神経萎縮症候群;MIM #258501)7)にあたる.常染色体潜性遺伝(劣性遺伝)疾患であり,■■■■遺伝子に変異が認められている.その遺伝子産物であるOPA3の機能は完全には解明されていないが,ミトコンドリア呼吸鎖の保護機能が示されている8). Ⅳ型はⅠ,Ⅱ,Ⅲ,Ⅴ型に分類されない未分類型とされ,幅広いスペクトルをもつ(MIM #250951).MEGDEL症候群またはSERAC1欠損症9)やTMEM70欠損症,Pearson症候群,ATPase欠乏症,ミトコンドリア枯渇症候群などが含まれる. Ⅴ型は非進行性小脳運動失調を伴う拡張型心筋症(DCMA)症候群(MIM #610198)を指す.常染色体潜性遺伝(劣性遺伝)疾患であり,■■■■■■■遺伝子に変異が認められている10).1 代謝経路(図8■1) 3■MGCA,3■メチルグルタル酸(3■MGA),3■ヒドロキシイソ吉草酸(3■HIVA)は,ロイシン代謝の5段目に位置する3■MGCHによる3■メチルグルタコニル■CoA(3■MGC)から3■ヒドロキシ■3■メチルグリタリル■CoA(HMG■CoA)への変換が阻害されると蓄積する.2 疫学1)・ Ⅰ型:文献上の報告は20例に満たない.わが国では,数例が確認されているのみである11■13).・ Ⅱ型:文献上の報告は100例以上,有病率1/30万〜1/40万とされる14).わが国では,10家系の報告がみられる.・ Ⅲ型:分献上の報告は36例以上でイラクのユダヤ人に多いとされる15).わが国からの報告はない.・ Ⅳ型:分献上では約100例報告されているが,正確には不明.・ Ⅴ型:カナダの一部の集団で報告されており,文献上の報告は20例に満たない.1疾患概要ロイシン異化過程の代謝産物である3■メチルグルタコン酸(3■MGCA)の尿中排泄増加をきたす疾患が,総じてメチルグルタコン酸尿症とされている.9つの異なる病型(Ⅰ〜Ⅸ型)に分類されており,原発性のロイシン代謝異常症はⅠ型のみで,Ⅱ〜Ⅴ型はミトコンドリア呼吸鎖異常症の側面をもつとされ,異なる病態機序を介して3■MGCAの尿中排泄増加をもたらす続発性とされている1).Ⅵ〜Ⅸ型は原因遺伝子が同定されてはいるが,まだ数例の症例報告にとどまる. 小児慢性特定疾病情報センターでの分類がⅠ〜Ⅴ型であるため,本項ではⅠ〜Ⅴ型までを解説する.また,急性期・慢性期の管理とフォローアップ指針に関しては,エビデンスの蓄積があるⅠ〜Ⅲ型までを記載する.

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