新生児マススクリーニングガイド対象疾患等診療ガイドライン
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(6)血液浄化療法 B(2)異化亢進の抑制 B6CC7療機関を受診するよう指導する.3 診断確定後の治療 治療の最終目的は発症を予防し,正常な発育・発達を獲得することである.ただし,本疾患では新生児期に発症した報告がなく,治療の必要性については議論も多い.❶ 薬物療法・ レボカルニチン(エルカルチン®):50〜100 mg/kg/日 B (エルカルチン® FF内用液10%,またはエルカルチン®錠)本疾患では,遊離カルニチンの低下をきたしている可能性があり,低下の際には補充を行う.脂1 Ⅰ型(MGA1) 他の有機酸代謝異常症とは異なり,急性発症は少ないと考えられている.以下は,一般的な有機酸代謝異常症の急性発作時の対応に準じる.❶ 確定診断急性期には代謝性アシドーシス,低カルニチン血症,飢餓時の低血糖などが生じうる.他の有機酸代謝異常症も念頭におきつつ,診断を行う.尿中有機酸分析で3■MGCAの多量の排泄を認めれば,本疾患を強く考える.❷ 急性期の検査他の有機酸代謝異常症と同様に,緊急時には,下記の項目について検査を行う.・ 血液検査(末■血,一般生化学検査)・ 血糖,血液ガス,アンモニア,乳酸・ピルビン酸,遊離脂肪酸,総ケトン体・血中ケトン体分画・ 尿検査:ケトン体,pH・ 画像検査:頭部CT・MRI❸ 急性期の治療方針本疾患に対する特異的な治療法はない.他の有機酸血症と同様,高カロリー輸液や血液浄化療法を要する場合がある. 他の有機酸代謝異常症と同様に代謝クライシス▶ ビタミンB12反応性メチルマロン酸血症(MMA)の可能性を考え,コバラミン製剤る.インスリンの併用で低血糖となる場合は,ブドウ糖投与量を増やして対応する.③ 静注用脂肪乳剤が使用可能なら,必要に応じて2〜3 g/kg/日で開始してよい.(3)代謝性アシドーシスの補正 B代謝性アシドーシスが高度の場合は炭酸水素ナトリウム投与による補正も行う.尿のアルカリ化は有機酸の排泄を容易にする. 補正における最小限のガイドラインとしては以下の通りである.循環不全や呼吸不全を安定させたうえで,なおpH<7.2であれば,炭酸水素ナトリウム(メイロン®;0.833 mmol/mL)BE×体重×0.2 mLの半量(half correct)を10分以上かけて静注する.その後,持続的に炭酸水素ナトリウムを投与する.−>10と 目標値はpH>7.2,pCO2>20,HCO3し,改善を認めたら,速やかに減量・中止する.(4)L⊖カルニチン投与* B有機酸の排泄促進目的に静注用レボカルニチン(エルカルチン® FF静注1000 mg*)50〜100 mg/kg/回×3回/日を投与する. 静注製剤が常備されていない場合,入手まで内服用L■カルニチン(エルカルチン® FF内用液10%*,またはエルカルチン®錠100 mg*)100〜150 mg/kg/日を投与する.(5)水溶性ビタミン投与 Bその他の各種水溶性ビタミン剤も診断確定前から投与を開始する.・チアミン100〜200 mg/日・リボフラビン100〜300 mg/日・ビタミンC 120 mg/kg/日・ビオチン5〜20 mg/日・ビタミンB121 Ⅰ型(MGA1)・ロイシン制限食(ヒドロキソコバラミン**,またはシアノコバラミン**)1〜2 mg/日を静注する.以上の治療開始後も代謝性アシドーシスの改善傾向が乏しい場合は,速やかに血液浄化療法を実施する必要がある.有効性および新生児〜乳幼児に実施する際の循環動態への影響の少なさから,持続血液透析(CHD)または持続血液透析濾過(CHDF)が第一選択となっており,実施可能な高次医療施設へ速やかに搬送することが重要である.腹膜透析については,搬送までに時間を要する場合などのやむを得ない場合以外には,推奨しない.2 Ⅱ型(Barth症候群) 心筋症による急性発症・増悪には心不全の治療を行う.❶ 確定診断急性心不全の患者において,尿中有機酸分析で3■MGCAの多量の排泄を認めれば,本疾患を強く考える.診断には,■■■■■■■■遺伝子の解析が必要である.❷ 急性期の検査一般的な急性心不全および急性代謝不全の検査を行う.・ 心臓超音波検査・ 血液検査(末■血,一般生化学検査)・ 血糖,血液ガス,アンモニア,乳酸・ピルビン酸,遊離脂肪酸,総ケトン体・血中ケトン体分画・ 尿検査:ケトン体,pH・ 画像検査:頭部CT・MRI❸ 急性期の治療方針 「先天性心疾患並びに小児期心疾患の診断検査と薬物療法ガイドライン」に従い,治療を行う●).・カルニチン補充38,39)・ 症例が少ないこと,小児期の病像が軽症から重症と一定していないことから,治療・管理の必8 メチルグルタコン酸尿症肪酸代謝異常症と同様に重度の低血糖や急性脳症様発症の原因となりうるため,遊離カルニチンの低値を認めた場合には補充を行い,血清(または濾紙血)遊離カルニチン濃度を50μmol/L以上に保つ.❷ 食事療法代謝経路からはロイシン除去が有効な可能性があるが治療としては確立していない.ロイシンを制限する場合は治療用特殊ミルク(ロイシン除去乳)を用い,低蛋白食と十分なカロリー,L■カルニチンの補充を行う.ただし,新生児期から厳格な食事療法が必要かについては,議論の余地がある.として下記の治療を開始する.(1)状態の安定化(重篤な場合)B① (必要であれば)気管内挿管と人工換気② 静脈ルートの確保③ 必要に応じて,昇圧薬を投与して血圧を維持する.④ 必要に応じて,生理食塩液を投与してよいが,過剰にならないようにする.ただし,生理食塩液投与のために異化亢進抑制策を後回しにしてはならない.⑤ 「診断基準」に示した臨床検査項目を提出する.残検体は破棄せず,保管する.急性期にはすべての蛋白摂取を中止し,体蛋白異化によるアミノ酸動員の亢進を抑制するための十分なエネルギー補給を行うことが必要である.① 絶食とし,中心静脈を確保のうえ,10%濃度以上のブドウ糖を含む電解質輸液:80 kcal/kg/日以上(あるいはGIR 6〜8 mg/kg/分)の投与を維持する.※ ブドウ糖の投与は,ミトコンドリア機能低下状態への負荷となって高乳酸血症を悪化させることもあり,注意が必要である.② 高血糖を認めた場合:糖濃度は減らさず,インスリン併用(0.05 U/kg/時から開始)を考慮す急性発作で発症した場合の診療慢性期の管理

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