新生児マススクリーニングガイド対象疾患等診療ガイドライン
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血糖に加え,脂肪肝,非常に強い代謝性アシドーシスが認められる.診断がつけば,重篤な発作予防が可能な疾患である.1 代謝経路 図9■1に代謝経路を示す.1 臨床病型 本症はこれまで,発症前に遺伝学的に診断される例を除き,ほぼすべての症例で急性の非ケトン性低血糖発作にて発症している.現在のところ,その他の病型が存在するかは不明である.・ 発症前型:家系内検索で発見される無症状の症例が含まれる.1 一般検査所見・発作時著しい非ケトン性低血糖著明な代謝性アシドーシスAST,ALT,LDH高値遊離脂肪酸(mM)/総ケトン体(mM)比は2.51 尿中有機酸分析* 発作時には低ケトン性ジカルボン酸尿症がみられるが,非特異的である.鑑別上,必要な検査である.非発作時には特徴的所見はない.注)発作時にグルタル酸を含むジカルボン酸排泄,4■hydroxy■6■methyl■2■pyroneなどの排泄が増加し,診断に有用との報告がある12).グルタル酸血症2型との鑑別が必要な場合がある.2 疫学 世界で29例の報告がある4■17).わが国では5例が診断されている16,17).・ 急性発症型:感染,飢餓などにより,意識障害,けいれんなどを伴った低血糖発作で発症する.2 主要症状および臨床所見通常,生後数か月から幼児期に発症する.6歳での初発低血糖発作の報告もある10).飢餓,感染時に,嘔吐,意識障害,けいれんで発症する.発作時には多くの場合肝腫大,脂肪肝がみられる.以上,5を超えることが多い.・非発作時所見なし2 画像検査発作時肝腫大と脂肪肝が認められる.2 タンデムマスによる濾紙血(または 脂肪酸代謝異常症との鑑別上必要な検査である.非発作時には特徴的所見はない.注)発作時にはフリーカルニチン(C0)の低下とアセチルカルニチン(C2)上昇の報告があるが,非特異的所見である10).3 酵素活性** 現在,日本では実施されていない.a)http://www.jsiem.com/4 遺伝子解析* HMG■CoA合成酵素遺伝子(■■■■■■)の2アレルに病因となる変異が同定される.2022年3月時点で,日本医療研究開発機構難治性疾患実用化研究事業「難プラ標準レジストリー1 脂肪酸代謝異常症 本症と同様の非ケトン性低血糖症をきたす疾患群である.尿中有機酸分析,血中アシルカルニチン分析で鑑別可能である.2 HMG⊖CoAリアーゼ(HMGCL)欠 本症と同様の非ケトン性低血糖症をきたす疾患1 疑診 前述の「診断の基準」のうち,「2.主要症状および臨床所見」,「参考となる検査所見」のうち「1.一般検査所見」を満たし,「診断の根拠となる特殊検査」の「1.尿中有機酸分析」かつ「2.タンダムマスによる濾紙血(または血清)アシルカ 新生児マススクリーニング(NBS)対象疾患で1 確定診断 遺伝子検査*が必要.急性期は疑い例として対応する.を使用し,新生児マススクリーニング対象疾患等の遺伝子変異を考慮したガイドライン改定に向けたエビデンス創出研究」(笹井班)として,遺伝子変異を同定してフォローするという研究を行っている.実施状況についてはホームページで確認可能であるa).である.尿中有機酸分析,血中アシルカルニチン分析で鑑別可能である.3 グルタル酸血症2型 本症と臨床像は異なるが,尿有機酸排泄パターンから鑑別が必要となることがある.血中アシルカルニチン分析で鑑別可能である.ルニチン分析」の非特異的所見を認めるもの疑診例とする.2 確定診断 「診断の根拠となる特殊検査」の「4.遺伝子解析」を満たすものを確定診断例とする.はない.2 急性期の検査 他の有機酸代謝異常症と同様に緊急時には下記の項目について検査を行う.9 HMG—CoA合成酵素欠損症23血清)アシルカルニチン分析*損症診断の基準参考となる検査所見診断の根拠となる特殊検査鑑別診断診断基準新生児マススクリーニング(NBS)で疑われた場合急性発作で発症した場合の診療

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