新生児マススクリーニングガイド対象疾患等診療ガイドライン
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❶ ブドウ糖投与による十分なエネルギー補給 B(1)10%濃度以上のブドウ糖を含む電解質輸液でブドウ糖投与速度(GIR)8〜10 mg/kg/分のブドウ糖を必要とすることが多い.表9■1❷ 脂肪摂取について C4時間6時間8~10時間10時間4歳以上7歳未満安定期のめやすであり,臨床経過や患者の状況により変更が必要な場合もある.−45 許容される食事間隔(間食含む)のめやす・ 血液検査:血糖,血液ガス,電解質,Ca,IP,アンモニア,AST,ALT,LDH,BUN,Cr,CK,UA,血算,アミノ酸分析,血清遊離脂肪酸,血清総ケトン体,乳酸・ピルビン酸・ 尿検査:ケトン体半定量,pH.・ 画像検査:意識障害があれば,頭部CT/MRI.肝腫大,脂肪肝の有無を腹部超音波検査でスクリーニング・ 低血糖時に採取した検体から,血清を0.5 mL以上冷凍保存する.同様に低血糖時の濾紙血も1spot以上,室温で十分に乾燥後,冷凍する.glucose静注後,初回の尿を最低0.5 mL以上冷凍保存する.患児の状態によっては,導尿も考慮する.これらは,他疾患除外のためにアシルカルニチン分析や尿中有機酸分析が必要となるからである.本症では高アンモニア血症はまれであり,著しい高アンモニア血症があれば,他の疾患を考慮する.3 急性期の治療方針 診断の確定していない段階での急性期治療は,日本先天代謝異常学会の「代謝救急診療ガイドライン」に準じる.代謝クライシスとして下記の治療を開始する.そのため,中心静脈を確保することが望ましい.(2)高血糖を認めた場合:糖濃度を減らすのではなく,インスリン併用(0.05 U/kg/時から開始) 重篤な低血糖発作を如何に起こさないかが重要である.飢餓を避け,胃腸炎などでの摂食不能時や,発熱などの異化亢進時などには早期の十分なブドウ糖輸液により低血糖発作を防ぐことが重要である. 感染症,特に胃腸炎は発作を誘発するので,早期の受診とブドウ糖補液を行う B. 安定していても,10歳までは1年に数回程度の受診を奨める.その後も1年に1回程度の確認のための受診が望ましい.1 一般的評価と栄養学的評価・身長,体重測定・ 血液ガス分析,血糖,ケトン体,遊離脂肪酸,アンモニア,アルブミン,末■血液像,一般的な血液生化学検査・ その他:上記以外の栄養学的評価に関係する骨代謝を含めた一般的項目も,病歴・食事摂取・身体発育に鑑みて,適宜測定する. これまでの海外報告例は,ほとんどが最初の著しい低血糖発作で診断され,その後は低血糖発作を反復していない.一方,初回発作時に死亡した例も複数の報告がある.長期的な予後の報告はない.血糖の維持におけるケトン体代謝への依存度が少なくなる小児期後半(10歳以降)は発作を起こしにくくなる可能性が高い.しかし,なかには非発作時は無症状である.ケトン体の産生障害なので,高脂肪食・飢餓は避ける.2 薬物療法 現時点で,薬物療法は確立していない.3 Sick dayの対応C 感染などによるストレス時,経口摂取不良時には速やかにブドウ糖補充を行う.4 移植療法 移植の適応疾患ではない.2 神経学的評価・ 年1回程度の発達チェック・ 診断時に一度,頭部MRI検査をしておくことが望ましい.発作が重篤であった場合は,その後の変化をMRIでフォローする.・ てんかん合併時:脳波検査も年1回程度行う.・ 運動機能障害:早期からの理学療法,作業療法,言語療法の介入が必要である.3 その他本症では,脂肪酸代謝異常症と違って骨格筋症状はないため,十分なエネルギー摂取があれば,通常の運動などの制限は不要と考えられる.低血糖を反復して,その結果,精神運動発達遅滞を生じて診断に至る例も今後見つかるのではと考えられる. 成人期に問題がないのかは,今後,症例のフォローアップが必要と考えられる.特にストレスの生じる妊娠出産に問題がないかなどの検討が必要である.を考慮する.インスリンの併用で低血糖となる場合は,ブドウ糖投与量を増やして対応する.❷ 代謝性アシドーシスの補正 B補正における最小限のガイドラインは以下である. 循環不全や呼吸不全を改善させてもpH 7.2未満であれば,炭酸水素ナトリウム(メイロン®)を投与する.・ メイロン®:BE×体重×0.3 mLの半量で(halfcorrect)緩徐(1 mEq/分以下かつ10分以上かけて)に静注目標値はpH>7.2,pCO2>20 mmHg,HCO3>10 mEq/Lとし,改善を認めたら速やかに中止する.ナトリウムの負荷を避けたい場合は,トロメタモール(THAM;サム®点滴静注セット)も考慮する.❸ 血液浄化療法 C診断が確定していない初回発作においては,代謝性アシドーシスの改善のために血液浄化療法が行われる場合がある.持続透析の準備などで,糖質投与というケトン体産生抑制の治療が遅れてしまわないように注意すべきである.❹ 人工呼吸管理等 B急性期に代謝性アシドーシスの代償のための多呼吸を認めることが多い.呼吸による代償で血中二酸化炭素は低値のことが多いが,状態が悪化すると呼吸による代償ができなくなり,呼吸性アシドーシスを含む混合性アシドーシスとなりうる.必要があれば迷いなく気管内挿管を行い,鎮静をして人工呼吸管理を導入する.1 食事療法❶ 空腹の回避一般的な注意事項として空腹を避けることが必要である.許容できる空腹時間は脂肪酸代謝異常症の原則に従う(表9■1) B.新生児期6か月まで1歳まで4歳未満日中3時間4時間4時間4時間4時間睡眠時9 HMG—CoA合成酵素欠損症慢性期の管理フォローアップ指針成人期の課題

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