新生児マススクリーニングガイド対象疾患等診療ガイドライン
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つC5⊖OHが高値で疑われた場合一般検査(末■血,一般生化学検査)に加え,血糖,血液ガス,アンモニア,乳酸,ピルビン酸,遊離脂肪酸,血中ケトン体分画を測定し,さらに尿中有機酸分析を行い,確定診断する.−]>14では,何らかの有機酸蓄積が疑われ,乳酸が高くない場合,かつ尿ケトン強陽性であればケトン体の蓄積が疑われる.3 急性期の治療方針診断の確定していない段階での急性期治療は,日本先天代謝異常学会の代謝救急ガイドラインに準じる.代謝クライシスとして下記の治療を開始する.❶ ブドウ糖投与による十分なエネルギー補給 B❷ C5:1のみが高く,本疾患の疑いがあるとされa)http://www.jsiem.com/型をきたす変異として知られている.また,p.A154T,p.A157V,p.Q165Hは軽症の非典型例として報告されている.ヨーロッパで報告の多いp.L122Vやp.R130Cは乳児型をきたすことが多いとされる. ただし,遺伝子変異と患者の生化学的プロファイルとの相関が明確な一方で,臨床像との相関に関しては一致しない症例もある6,9). 血中アシルカルニチン分析,尿中有機酸分析などの検査異常所見からはβケトチオラーゼ欠損症が鑑別疾患となり,臨床徴候からはミトコンドリア病が鑑別疾患となる.HSD10病の重篤な症例はミトコンドリア病の診断基準を満たすものもあるが,ミトコンドリア病の診断基準では判定できな1 疑診 「診断の根拠となる特殊検査」のうち,「1.血中アシルカルニチン分析(タンデムマス法)」もしくは「2.尿中有機酸分析」のA)を満たすものを疑診とする.1 確定診断❶ 新生児マススクリーニング(NBS)でC5:1か 2022年3月時点で,日本医療研究開発機構難治性疾患実用化研究事業「難プラ標準レジストリーを使用し,新生児マススクリーニング対象疾患等の遺伝子変異を考慮したガイドライン改定に向けたエビデンス創出研究」(笹井班)として,遺伝子変異を同定してフォローするという研究を行っている.実施状況についてはホームページで確認可能であるa).い症例が存在する.わが国では,低血糖やケトアシドーシスを発症し,尿中有機酸分析でβケトチオラーゼ欠損症が疑われた後,本疾患が同定された症例も報告されている.鑑別診断のためには酵素活性測定や遺伝子解析を行う.2 確定診断 疑診例のうち,「2.尿中有機酸分析」のA)かつB)を満たすか,「3.酵素活性測定」,「4.遺伝学的検査」のいずれかを認めれば,確定診断とする. 重症度分類は日本先天代謝異常学会の重症度分類を用いる 尿中有機酸分析にて特徴的所見が不十分な場合は,遺伝子診断による確定診断を行う.酵素活性測定の併用による確定診断が望ましいが,現在のアッセイ法では線維芽細胞が必要であり,生後数か月以降が現実的である.そのため,新生児期のマススクリーニングで疑われ,尿中有機酸分析においても特徴的所見が不十分な症例の確定診断は,遺伝子解析が現実的である.・ 尿検査:ケトン体,pH・ 画像検査:頭部CT/MRI要があり,尿中有機酸分析により鑑別しなくてはならない.MCD,HMGL欠損症(ヒドロキシメチルグルタル酸血症)では新生児期に発症する症例があり,血液ガス検査でアニオンギャップ開大性の代謝性アシドーシスなどの異常を示す場合は,これらの疾患の可能性が高い.2 診断確定までの対応 上記の血液ガス,一般生化学検査が異常なく,かつ哺乳良好で,体重増加もよければ,外来で経過観察とする.発熱や哺乳不良などがあれば直ちに受診するように伝える.3 診断確定後の治療 慢性期の管理(後述参照). 確定診断に用いる検査のために,血清保存(冷凍),尿保存(冷凍)を行う.アニオンギャップ開大[Na+]−[Cl−+HCO3ケトン体産生,脂肪酸β■酸化系を完全に抑制することが必要であり,それに見合うだけのブドウ糖を輸液することが必要である.(1)10%濃度以上のブドウ糖を含む電解質輸液で,ブドウ糖投与速度(GIR)8〜10 mg/kg/分のブドウ糖を必要とすることが多い.そのため,中心静脈を確保することが望ましい.(2)高血糖を認めた場合:ブドウ糖投与量を減らすのではなく,インスリン併用(0.05 U/kg/時から開始)を考慮する.インスリンの併用で低血糖10 HSD10病45た場合C5:1のみが高い場合でも本疾患を否定できない.血中アシルカルニチン分析の再検と尿中有機酸分析を行う.❸ C5⊖OHのみが高く,本疾患を含めた有機酸代謝異常症の疑いがあるとされた場合他の疾患鑑別のため,血糖,血液ガス,アンモニア,乳酸,ピルビン酸,遊離脂肪酸,血中ケトン体分画,AST,ALT,LDH,CKなどを検査し,尿中有機酸分析を行う. このような場合,複合カルボキシラーゼ欠損症(MCD),HMG■CoAリアーゼ(HMGL)欠損症(ヒドロキシメチルグルタル酸血症),メチルクロトニルグリシン尿症(MCG)を優先的に考える必急性発作で発症した場合の診療 本疾患はNBSで発見されることはまれであると考えられる.NBSで問題がなくても本疾患を否定できない.飢餓,感染症に伴い嘔吐,多呼吸,意識障害を伴う重篤な代謝性アシドーシスをきたした症例においては,本疾患の可能性を考慮に入れる必要がある. また,高乳酸血症を伴っている場合は,ミトコンドリア病も積極的に鑑別していく必要がある.1 確定診断診断前に発症した場合,直ちに発作時の検体を用いて血中アシルカルニチン分析や尿中有機酸分析による生化学診断を行う.2 急性期の検査 他の有機酸代謝異常症と同様に,緊急時には下記の項目について検査を行う.・ 血液検査:血糖,血液ガス,電解質,Ca,IP,アンモニア,AST,ALT,LDH,BUN,Cr,CK,UA,末■血,アミノ酸,乳酸,ピルビン酸,遊離脂肪酸,総ケトン体鑑別診断診断基準新生児マススクリーニング(NBS)で疑われた場合

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