新生児マススクリーニングガイド対象疾患等診療ガイドライン
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−  目標値はpH 7.2<,pCO2 20 mmHg<,HCO310 mEq/L<とし,改善を認めたら速やかに中止する.(3)血液浄化療法 C❹ 脂肪摂取について C(2)代謝性アシドーシスの補正 B表11■14時間6時間8~10時間10時間B―45❶ 確定診断❷ 急性期の検査 許容される食事間隔(間食含む)のめやす1 疑診 前述の「診断基準」のうち「2.主要症状および臨床所見」,「参考となる検査所見」のうち「1.一般検査所見」を満たし,「診断の根拠となる特殊検査」の「1.尿中有機酸分析」もしくは「2.タンデムマスによるアシルカルニチン分析」を認める 現状の新生児マススクリーニング(NBS)では,診断基準に準じる.他の有機酸代謝異常症と同様に緊急時には下記の項目について検査を行う.・ 血液検査:血糖,血液ガス,電解質,Ca,IP,アンモニア,AST,ALT,LDH,BUN,Cr,CK,UA,末■血,アミノ酸,乳酸,ピルビン酸,遊離脂肪酸,総ケトン体・ 尿検査:ケトン体,pH・ 画像検査:頭部CT/MRI検査鑑別診断・確定診断の検査のため,血清保存(冷凍),尿保存(冷凍),濾紙血の確保(よく乾燥させ冷凍保存)を行う. 本症では高アンモニア血症はまれであり,著しい高アンモニア血症があれば,他の疾患を考慮すべきである.❸ 急性期の治療方針 「代謝救急」の項を参照のこと.ものは疑診例として追加の精査を検討する.2 確定診断 疑診例のうち,「診断の根拠となる特殊検査」の「3.酵素活性,イムノブロット(リンパ球,線維芽細胞)」「4.遺伝子解析」のどちらかを満たすものを確定診断例とする.SCOT欠損症をスクリーニングできない. 代謝クライシスとして下記の治療を開始する.(1) ブドウ糖投与による十分なエネルギー補給ケトン体産生,脂肪酸β■酸化系を完全に抑制することが必要であり,それに見合うだけのブドウ糖を輸液することが必要である.① 他の脂肪酸代謝異常症に準じ,10%濃度以上のブドウ糖を含む電解質輸液を行う.ブドウ糖投与速度(GIR)8〜10 mg/kg/分のブドウ糖を必要とすることが多い.そのため,可能な限り中心静脈を確保することが望ましい.② 高血糖を認めた場合:糖濃度を減らすのではなく,インスリン併用(0.05 U/kg/時から開始)を考慮する.インスリンの併用で低血糖となる場合は,ブドウ糖投与量を増やして対応する.ケトン体産生が抑制されれば,アシドーシスは改善に向かう. 補正における最小限のガイドラインとしては以下の通りである.循環不全や呼吸不全を改善させてもpH 7.2>であれば,炭酸水素ナトリウム(メイロン®)を投与する.・ メイロン®:BE×体重×0.3 mLの半量で(halfcorrect)10分以上かけて静注診断が確定していれば,必要とすることはほとんどない.しかし,診断が確定していない初回発作においては,代謝性アシドーシスの改善のため 重篤なケトアシドーシスを如何に起こさないかが重要である.一般には,食後6〜8時間でグリコーゲンは枯渇し,脂肪酸β酸化によるケトン体産生が亢進し,血糖維持に重要となる32).SCOT欠損症ではその後,急激なケトン体の上昇をきたすことになる.このため,空腹時間を短くすることが基本的な対応となる.高炭水化物食も有効と考えられる.また,重炭酸ナトリウムの内服を行っている例もみられる.飢餓を避け,胃腸炎などでの摂食不能時や,発熱などの異化亢進時など,ケトン産生ストレス時には早期の十分なブドウ糖輸液により重篤なケトアシドーシスを防ぐことが重要である.1 食事療法❶ 空腹の回避一般注意として空腹を避けることが必要である.空腹時間は脂肪酸代謝異常症の原則に従う(表11■1)B. 感染症,特に胃腸炎は発作を誘発するので,早期の受診とブドウ糖補液を行う B.に血液浄化療法が行われる場合がある.持続透析の準備などで,糖質投与というケトン体産生抑制の治療が遅れてしまわないように注意すべきである.(4)人工呼吸管理等 B急性期管理に人工呼吸管理を必要とすることがある.過剰な脂肪摂取は控えるべきである.ケトン食(KD)は明らかに禁忌である.平均的な日本人の食事においては,ケトン体代謝異常症の患者においても特段の脂肪制限をする必要はないと考えられる.しかし,欧米化した食事,ハンバーガーやフライドチキンなどを過食することは避ける.❺ 蛋白摂取について C本疾患と同様に,ケトン体利用障害のため,ケトアシドーシス発作をきたすβケトチオラーゼ欠損症においては,軽度の蛋白制限が有効であると考えられている.SCOT欠損症においては,過去に数例,蛋白制限を行った報告があるが4,9,12),発作予防に対する効果は定見が得られていない.2 薬物療法 D 慢性期に推奨される薬物療法はない.重炭酸ナトリウムの内服11,12,16,19),L■カルニチン内服19)が行われた報告が過去に存在するが,発作予防の効果は不明である.血中カルニチン濃度が低い患者においては,通常のカルニチン補充は推奨されうる.3 Sick dayの対応 C 間欠的に発症する発作時は早期かつ適切に治療されなければならない.軽い感染時などにはブドウ糖や炭水化物が豊富なスナックなどの頻回の補食も奨められる.日本の医療環境であれば,迷ったら糖輸液を受けることができる体制を事前に構築しておくことも重要である.自宅での尿ケトン試験紙モニターも有用である.新生児期6か月まで1歳まで4歳未満4歳以上7歳未満安定期のめやすであり,臨床経過や患者の状況により,変更が必要な場合もある.睡眠時日中3時間4時間4時間4時間4時間11 スクシニル—CoA:3—ケト酸CoAトランスフェラーゼ(SCOT)欠損症症を疑われた場合の対応診断基準新生児マススクリーニング(NBS)で疑われた場合急性発作で発症した場合の診療 診断の確定していない段階での急性期治療は,日本先天代謝異常学会の「代謝救急診療ガイドライン」に準じる.1 著しいケトアシドーシス発作にて本慢性期の管理

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