新生児マススクリーニングガイド対象疾患等診療ガイドライン
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 Menkes病は,X連鎖性遺伝の■■■■■遺伝子異常症で,原則,男児に発症する.ATP7Aは銅輸送蛋白で,ATP7Aの欠損症では,細胞内から細胞外に銅が輸送されない.ATP7Aは,正常では肝細胞以外のほとんどの臓器・細胞で機能している.本症では腸管粘膜での銅輸送障害により,食事中の銅は腸粘膜に蓄積し,腸粘膜から血液中に輸送されず,体内に吸収されずに,体内は著明な銅欠乏になる. 責任遺伝子である■■■■■(銅輸送■■■■■■)は1993年に発見された1■3),■■■■■は染色体上ではXq21.1(Xq13.3との記載もある)に存在し,本症はX連鎖性遺伝形式を示す4).本症患者での遺伝子変異は非常に多彩で,わが国でも55の変異が報告されており5),国際的にも350以上の変異が報告されている6,7).通常,母親は保因者であるが,約25%は母親に病的変異は同定されず,患児での突然新生変異で発症している8).まれであるが,女児例が報告されている.今まで15例の女子例が報告されており,そのうちの5例はX染色体/常染色体の転座,1例は45X/46XXのモザイク,残りの9例中6例はGバンドでの染色体には異常が 本症は1962年にMenkes小児科医が特有な頭髪,発育障害,神経症状を示す男児を初めて報告し14),Danks小児科医が病態は銅の吸収障害による銅欠乏の症状であることを初めて報告した15). 銅は生体に不可欠な必須微量元素で,銅が欠乏すると銅酵素の活性が低下する.銅の1日推奨量は成人男性0.9 mg,女性0.7 mgとされている16). 頭髪異常は出生時からみられることがあるが,銅欠乏の障害は生後2か月以降に,重篤な神経障害,結合織異常(血管蛇行,膀胱憩室,骨粗鬆症など)で発症する.新生児期にヒスチジン銅の皮下注射を開始すれば,神経障害はある程度予防できるので,早期診断が重要である.ヒスチジン銅の皮下注射の治療開始が生後2か月以降(新生児期を過ぎてから)では,神経障害は全く改善しない.ないが,skewed X■inactivation patternが認められたと報告されている9). 軽症型Menkes病および本症の極軽症型であるオクシピタル・ホーン症候群(「オクシピタル・ホーン症候群」の項参照)では,■■■■■遺伝子異常はsplice■siteまたはmissense変異が多く,ATP7A活性がある程度残存しているとされている11,12). わが国での発症頻度は,全国調査から男児出生約12万人に1人と考えられている5,12).また,わが国で今までに2例の女子例が報告されている6,10).腸管から吸収された銅は門脈を介して肝臓に取り込まれる.肝臓からの銅の分泌経路は2つあり,1つは血液への分泌ともう1つは胆汁への分泌である.血液への分泌はセルロプラスミン銅として分泌されるが,大部分は胆汁へ排泄される.尿中への銅の排泄はごく少量である(50μg/日以下). 血液中では,血清銅の約90%はセルロプラスミ1疾患概要遺伝形式・遺伝子異常,発症頻度病態14Menkes病

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