新生児マススクリーニングガイド対象疾患等診療ガイドライン
67/99

図14■1銅の体内代謝SOD:スーパーオキシドジスムターゼ腸粘膜から吸収された銅は門脈を介して肝臓に取り込まれ,一部は肝臓からセルロプラスミンとして血液中に分泌され,大部分は胆管に排泄される.血液中の銅の約90%はセルロプラスミン銅である.尿中での排泄は微量である.図14■2正常細胞での銅の代謝CTR1:copper transporter 1,COX:シトクロムcオキシダーゼ,ATP7A⊘B:copper⊖transporting P⊖type ATPase A⊘B,SOD:スーパーオキシドジスムターゼ細胞膜にあるCTR1で銅は細胞内のサイトソルに取り込まれる.サイトソルに取り込まれた銅は,COX1,CCC2,ATOX1(HAH1)の銅シャペロンにより,それぞれミトコンドリアのチトクロームCオキシダーゼ,サイトソルのZn⊘Cuスーパーオキシドジスムターゼ(SOD),Golgi体膜にあるATP7AまたはATP7Bに運ばれる.ANP23図14■3ATP7AおよびATP7Bの模式図ATP7AとATP7Bは構造が非常に類似しており,細胞のサイトソルからGolgi体への銅の輸送を司っている.ATP7Bは肝細胞で作用しており,ATP7Aは肝細胞以外の全身のほとんどの細胞で作用している.ン結合銅で,残りの約10%はアルブミンやアミノ酸と結合している(図14■1)17).血清中の銅は全身の細胞の細胞膜に存在する銅輸送蛋白であるCTR1で細胞内サイトソルに取り込まれる.サイトソルに取り込まれた銅は,COX1,CCC2,ATOX1(HAH1)の銅シャペロンにより,それぞれミトコンドリアのチトクロームCオキシダーゼ,サイトソルのZn/Cuスーパーオキシドジスムターゼ(SOD),Golgi体膜にあるATP7AまたはATP7Bに運ばれる(図14■2)18).ATP7AとATP7Bは構造が非常に類似しており,サイトソルからGolgi体への銅の輸送を司っている(図14■3).ATP7Bは肝細胞で作用しており,ATP7Aは肝細胞以外の全身のほとんどの細胞で作用している18). 本症患者では,腸管でのATP7A欠損により,食事中の銅は腸粘膜に蓄積し,体内に吸収されない.その結果,体内は銅欠乏になり,銅酵素活性が低下し,様々な症状を呈する(表14■1)18).さらに,銅はサイトソルからGolgi体内に輸送されない.その結果,Golgi体は銅欠乏になり,分泌銅酵素の活性低下をきたす.一方,細胞内では,銅はサイトソルのメタロチオネインと結合して蓄積する(図14■4,14■5). 血液脳関門を構成する脳血管内皮細胞やアストロサイトにもATP7Aが関与しているので,Men-kes病では,血液脳関門にも銅が蓄積し,神経細胞は著明な銅欠乏になる.銅を非経口的に投与しても,血液脳関門に銅が蓄積し,神経障害は改善しない(図14■6)19■21).しかし,血液脳関門の病態が未熟な時期(新生児時期)に,銅を非経口的に投与すると,銅はある程度神経細胞に輸送され,神経障害もある程度予防できる22■24). 培養皮膚線維芽細胞にも銅が蓄積しており,培養皮膚線維芽細胞の銅濃度が高値であれば,確定診断ができる6).14 Menkes病体内100mg 赤血球5.5mg(SOD)脳20mg,筋35mg,結合織10mg20mg/日血液セルロプラスミン4.3mgアルブミン/ヒスチジン0.2mg腎臓5mg肝臓1~2mg/日胆管1~2mg/日尿<50μg/日食事摂取銅(2mg/日)十二指腸便2mg/日N末端CPCCPCCuCuCuCuCuCuCuCTR1ATPC末端サイトソルGolgi体ATP7A/BGolgi体ATP7A/BATOX1CCSCOX17COX血液SOD1ミトコンドリアATP7BMTMT

元のページ  ../index.html#67

このブックを見る