新生児マススクリーニングガイド対象疾患等診療ガイドライン
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4腸ab5図14■5Menkes病での体内での銅代謝病態食事中の銅は腸粘膜細胞に蓄積し,体内輸送されないで,血清銅は低値になる.肝細胞の銅も減少し,セルロプラスミンが合成されないで,血清セルロプラスミンも低下する.銅を非経口的に投与すると,肝細胞の銅濃度は改善し,血清銅,セルロプラスミンも上昇する.しかし,他の細胞では,銅を非経口的に投与しても,ATP7Aが機能しないために,Golgi体内の銅濃度は改善しない.図14■6Menkes病での腸管と血液脳関門の模式図a:小腸粘膜での腸管から体内への銅の取り込みを示す.左は正常の銅の輸送,右はMenkes病の病態を示す.b:血液脳関門を示す.中央部は脳血管でアストロサイトが脳血管周囲を取り囲んでいる.矢印は血管からニューロンへの銅の流れを示す.脳ではアストロサイトに銅蓄積病態があるため,非経口的に銅を投与しても,銅はアストロサイトに蓄積し,ニューロンには運ばれない.〔Fujisawa C, et al.:Early clinical signs and treatment of Menkes disease. Mol Genet Metab Rep 2022;31:100849を基に作成〕図14■4細胞内での銅代謝とMenkes病での銅代謝障害●:銅CTR1:CTR1:copper transporter 1,ATP7A:copper⊖transporting P⊖type ATPase A,DBH:ドパミンβヒドロキシダーゼa:正常では,細胞膜にあるCTR1により銅は細胞内に取り込まれる.細胞内に取り込まれた銅はサイトソルにあるATOXでGolgi体膜まで運ばれ,ATP7Aの働きで,Golgi体内に取り込まれる.Golgi体に取り込まれた銅は銅分泌酵素として,細胞外に分泌される.b:Menkes病では,ATP7A欠損により,銅はサイトソルに蓄積し,Golgi体内は銅欠乏になり,銅酵素が合成されずに活性が低下する.表14■1おもな銅酵素,その働き,活性低下による症状ATP7A酵素名(細胞内局在)チトクロームCオキシダーゼ(cytochrome C oxidase)(ミトコンドリア)リシルオキシダーゼ(lysyl oxidase:LOX)(分泌酵素)ドパミンβヒドロキシダーゼ(dopamine β⊖hydroxidase:DBH)(分泌酵素)チロシナーゼ(tyrosinase)(サイトソル)スルフヒドリルオキシダーゼ(sulfhydryl oxidase)Cu⊘Znスーパーオキシダーゼ(Cu⊘Zn superoxide dismutase)セルロプラスミン(ceruloplasmin)(分泌酵素)エネルギー産生,ミトコンドリアでの電子伝達系の酵素結合織の架橋ドパミンをノルアドレナリンに変換メラニン合成ケラチンクロスリンケージ抗酸化作用銅の運搬,フェロキシダーゼ作用(鉄の還元)作用血管異常,膀胱憩室,骨粗鬆症,骨折,皮膚・関節過伸展低血圧,低体温色白,赤茶けた頭髪頭髪異常中枢神経障害貧血活性低下による症状脳障害,低体温,筋力低下14 Menkes病血液MTGolgi体ATP7AATOX1(HAH1)CTR1a 正常細胞分泌銅酵素MTMTMT血液MTMTGolgi体MTATOX1(HAH1)MTCTR1b 正常細胞分泌銅酵素(LOX, DBH)MTMTMTMTMTMTMTMTMTMTMTCu血清Cu⬇肝細胞Cu⬇血清Cu⬇セルロプラスミン⬇腸管腔CuCu腸管腔Cu⬆ATP7AATP7A正常発現細胞ATP7ACu⬇Cu⬇ATP7ACu⬇銅酵素活性⬇臨床症候トランストランスGolgi網Golgi綱Cu⬇銅酵素活性⬇ニューロンアストロサイト血管CuCu

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