新生児マススクリーニングガイド対象疾患等診療ガイドライン
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図14■8カテコールアミン代謝ドパミンβヒドロキシダーゼ(DBH)は銅酵素で,銅が欠乏すると活性が低下する.その結果,ドパミンが増加し,ノルアドレナリンは減少する.図14■9Menkes病患者の頭部CTの継時的変化a:生後2か月のときに頭部を打撲して撮影したCT画像,神経症状はなかった.b:神経症状があり,本症と診断された生後8か月時.c:診断後ヒスチジン銅の皮下注射を開始したが,脳萎縮,硬膜下出血が認められた(生後11か月時).図14■7Menkes病患者の頭髪の異常〔Kinky(ちりちりの)hairともいわれる〕ちりちりで細く色が薄い毛である.ヒスチジン投与で頭髪異常は改善する.などが発症するが,発症時期や程度は症例により異なる23,25,29) てんかんは難治性で,West症候群(約50%),強直間代発作,ミオクローヌス発作,スパスムス,多焦点性発作など様々である29■31). 膀胱憩室は20例中16例で認められ,膀胱憩室を合併した例では,尿路感染を繰り返していた.膀胱憩室発症時期は,尿路感染の予防抗菌薬内服1 血清銅,セルロプラスミン 生後2か月以降は,血清銅は30μg/dL以下,セは半数で効果がみられたが,導尿を行っている患者も半数みられた29). 肺炎を合併する症例が多く,20例中5例は気管切開を受けていた. 十分な経口摂取が困難な例が多く,経口栄養のみは19例中6例で,経管栄養は11例,中心静脈栄養が2例であった29).ルロプラスミンは15 mg/dL以下と著明に低値である(病態の項参照).しかし,新生児期は健常でも,肝機能が未熟なため,血清銅とセルロプラス14 Menkes病1 臨床病型 典型的症状を呈する古典的Menkes病(これを一般にはMenkes病という)と症状が軽い軽症型Menkes病がある.軽症型Menkes病は非常にまれである.最も軽い軽症型は,オクシピタル・ホーン症候群と診断され,結合織異常がおもな症状である(「オクシピタル・ホーン症候群」の項を参照)22■24).さらに,最近,脊髄性筋委縮症(SMA)の軽症型を示す■■■■■遺伝子異常症が報告されている26).2 主要症状❶ 神経症状発症前の特徴本症患者の平均在胎週数は36.9週(33〜39週,■=36),平均出生時体重は2.62 kg(1.65〜2.83 kg,■=35),平均身長は47.1 cm(43.6〜48.3 cm,■=15),平均頭囲は31.9 cm(31.2〜32.0 cm,■=12)とやや早産,低出生で出生する傾向がある27).また,高口蓋や小顎症などの小奇形を合併している場合がある28).新生児期の症状としては,黄疸,低体温,頭髪異常(縮れ毛,色素脱,少ない頭髪など)が認められる患児が多い23,25).しかし,症状の程度は様々で,出生時にすでに硬膜下出血や骨折がみられる例から出生時に症状がない場合もある.症状の程度が症例により異なるのは,遺伝子変異のタイプと残存酵素活性によると考えられる.頭髪異常は特徴的で出生時から認められる症例が多いが,それに注目して本症が診断される症例は非常に少ない.神経症状がみられない生後2か月以前でも,低体温のエピソード,図14■7に示すような頭髪異常(少ない毛,縮れ毛,色素減少など),硬膜下出血,骨折があればMenkes病を疑い,血清銅,セルロプラスミンを測定し精査を行うことが早期診断につながり,非常に重要である18,23).❷ 神経症状発症後(生後2か月以降)の症状生後2か月以降にけいれん,哺乳力減少,発達遅滞,筋緊張低下が発症する. 進行するにつれて,難治性けいれん,膀胱憩室,血管蛇行,頭蓋内出血,骨粗鬆症,やせ,下痢,著明な発達遅滞,発育障害,繰り返す尿路感染症ジヒドロキシフェニルアラニンドパミン(DA)ジヒドロキシフェニル酢酸(DOPAC)ホモバニリン酸(HVA)abc67ドパミンβヒドロキシダーゼ(DBH)ノルアドレナリンジヒドロキシフェニルグリコールバニリルマンデル酸アドレナリン(DHPG)(VMA)病型,症状臨床検査

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