新生児マススクリーニングガイド対象疾患等診療ガイドライン
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(図15■1).血液への分泌はセルロプラスミン銅として分泌されるが,大部分は胆汁へ排泄される.尿中への銅の排泄はごく少量である(50μg/日以下).血液中では,血清銅の約90%はセルロプラスミン結合銅で,残りの約10%はアルブミンやアミノ酸と結合している(図15■1). 血清中の銅は,全身の細胞の細胞膜に存在する銅輸送蛋白であるCTR1で細胞内サイトソルに取り込まれる.サイトソルに取り込まれた銅は, 本症の責任遺伝子は,Menkes病と同じ■■■■■で,患者は原則男子である.本症患者ではATP7Aの活性がある程度残存しているため,症状がMenkes病に比べて著しく軽い.おもな症状は結合織の異常によるもので,筋力低下,歩行障害,膀胱憩室,血管異常などである.頭部単純側面X線で後頭骨に角様変化(occipital horn)がみられることより診断名がついている.ただし, 責任遺伝子である■■■■■(銅輸送■■■■■■)はMenkes病の責任遺伝子として1993年に発見され1■3),すぐに本症の責任遺伝子であることが明らかになった4■6).■■■■■は染色体上ではXq13.3に存在し,本症はX連鎖性遺伝形式を示す.本症患者で,今まで17の異なる変異が報告されている7,8).スプライスサイト変異が7個,ミスセンス変異が4個,フレームシフト変異が2個,ディープイントロン変異が2個,欠失が1個7),ノンセンス変異が1個,報告されている8).さらにエクソンの重複も報告されている9,10).わが国の本症患者では■■■■■のイントロン6でのスプライス 本症は1975年にLazoffらによって,はじめて報告された16).Ehlers■Danlos syndrome type IX,X■linked cutis laxaともいわれていた17■19).銅は生体に不可欠な必須微量元素で,銅が欠乏すると銅酵素の活性が低下する.銅の1日推奨量は成人男性0.9 mg,女性0.7 mgとされている20).腸管から吸収された銅は門脈を介して肝臓に取り込まれる.肝臓からの銅の分泌経路は2つあり,1つは血液への分泌ともう1つは胆汁への分泌である年少児では本所見はみられない場合がある. 多くの患者では血清銅,セルロプラスミンが低値であるが,血清銅,セルロプラスミンが基準範囲でも本症を完全には否定できない.確定診断は■■■■■の遺伝子診断,または培養皮膚線維芽細胞の銅濃度高値で行うことができる.現在,病態を改善させる治療法はなく,対症療法のみである.サイト変異が報告されている11).これらの変異では,正常の■■■■■ mRNAも産生されるため,ATP7A活性がある程度残存している.生化学的には酵素活性は測定できないが,reverse tran-scriptase■PCR(RT■PCR)分析などから,残存活性は約2〜20%で,症状がMenkes病に比較して軽い(「症状」の項参照). わが国では1993年に初めて本症患者が報告されている12).わが国の発症頻度は,全国調査から,男児出生約68万人に1人とまれな疾患である13,14). 非常にまれであるが,本症所見を呈する女性が報告されている15).1疾患概念遺伝形式・遺伝子異常,発症頻度病態15オクシピタル・ホーン症候群

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