新生児マススクリーニングガイド対象疾患等診療ガイドライン
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2ANP3図15■1正常人での銅の体内代謝SOD:スーパーオキシドジスムターゼ(児玉浩子:血清銅・セルロプラスミン.In:水口雅,他 編:小児臨床検査ガイド,文光堂,2017:192⊖197を基に作成)図15■3ATP7A,ATP7Bの模式図ATP7AはGolgi体膜に存在し,サイトソルからGolgi体内への銅の輸送を司っている.図15■2正常細胞での銅の代謝CTR1:copper transporter 1,COX:チトクロームcオキシダーゼ,ATP7A⊘B:copper⊖transporting P⊖type ATPase A⊘B,SOD:スーパーオキシドジスムターゼ表15■1おもな銅酵素,その働き,活性低下による症状COX1,CCC2,ATOX1(HAH1)の銅シャペロンにより,それぞれミトコンドリアのチトクロームcオキシダーゼ(COX),サイトソルのZn/Cuスーパーオキシドジスムターゼ(SOD),Golgi体膜にあるATP7AまたはATP7Bに運ばれる(図15■2).ATP7AとATP7Bは構造が非常に類似しており,サイトソルからGolgi体への銅の輸送を司っている(図15■3).ATP7Bは肝細胞で作用しており,ATP7Aは肝細胞以外のほとんどの全身の細胞で作用している22■24). 本症患者では,腸管でのATP7A欠損により,食事中の銅は腸粘膜に蓄積し,体内に吸収されない.その結果,体内は銅欠乏になり,銅酵素活性が低下し,様々な症状を呈する(表15■1).しかし,本症患者はATP7A活性がある程度残存しているため,症状はMenkes病より軽い.また,ATP7Aが機能しないと,銅はサイトソルからGolgi体内に輸送されない.その結果,銅はサイトソルにメタロチオネインと結合して蓄積し,Golgi体は銅欠乏になる.Golgi体の銅欠乏により,分泌銅酵素の活性低下をきたす(図15■4). 本症の症状・所見の特徴はおもに結合織異常である.コラーゲンの架橋形成を司るリシルオキシダーゼ(LOX)は分泌銅酵素であり,本症の結合織異常はLOX活性低下によるコラーゲン架橋形成の不全によるものと考えられている(図15■5)25,26).酵素名(細胞内局在)チトクロームCオキシダーゼ(cytochrome C oxidase)(ミトコンドリア)リシルオキシダーゼ(lysyl oxidase:LOX)(分泌酵素)ドパミンβヒドロキシダーゼ(dopamine β⊖hydroxidase:DBH)(分泌酵素)チロシナーゼ(tyrosinase)(サイトソル)スルフヒドリルオキシダーゼ(sulfhydryl oxidase)Cu⊘Znスーパーオキシダーゼ(Cu⊘Zn superoxide dismutase)セルロプラスミン(ceruloplasmin)(分泌酵素)エネルギー産生,ミトコンドリアでの電子伝達系の酵素結合織の架橋ドパミンをノルアドレナリンに変換メラニン合成ケラチンクロスリンケージ抗酸化作用銅の運搬,フェロキシダーゼ作用(鉄の還元)作用血管異常,膀胱憩室,骨粗鬆症,骨折,皮膚・関節過伸展低血圧,低体温色白,赤茶けた頭髪頭髪異常中枢神経障害貧血活性低下による症状脳障害,低体温,筋力低下15 オクシピタル・ホーン症候群体内100mg 赤血球5.5mg(SOD)脳20mg,筋35mg,結合織10mgATOX1CTR1COX1720mg/日血液セルロプラスミン4.3mgアルブミン/ヒスチジン0.2mg腎臓5mgATP7A/BGolgi体ATP7A/BCCSCOX肝臓1~2mg/日胆管1~2mg/日尿<50μg/日血液ATP7BMTSOD1ミトコンドリア食事摂取銅(2mg/日)十二指腸便2mg/日MTN末端CuCuCuCuCuCuATPCuC末端サイトソルCPCCPCGolgi体

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