新生児マススクリーニングガイド対象疾患等診療ガイドライン
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図15■4ATP7A欠損細胞での銅代謝病態●:銅CTR1:CTR1:copper transporter 1,ATP7A:copper⊖transporting P⊖type ATPase A,DBH:ドパミンβヒドロキシダーゼa:正常では,細胞膜にあるCTR1により銅は細胞内に取り込まれる.細胞内に取り込まれた銅はサイトソルにあるATOXでGolgi体膜まで運ばれ,ATP7Aの働きで,Golgi体内に取り込まれる.Golgi体に取り込まれた銅は銅分泌酵素として,細胞外に分泌される.b:Menkes病では,ATP7A欠損により,銅はサイトソルに蓄積し,Golgi体内は銅欠乏になり,銅酵素が合成されずに活性が低下する.図15■5コラーゲンの構造リシルオキシダーゼ(LOX)は架橋形成を司っている.本症ではLOX活性低下により,コラーゲン架橋形成が障害される.図15■7オクシピタル・ホーン症候群患者筋力低下の程度は症例によって異なる. オクシピタル・ホーン症候群患者の皮膚過伸展図15■8オクシピタル・ホーン症候群の関節変形図15■6-CH=N-CH2-CH・R- 発症年齢は1〜10歳と幅が広い.筋力低下,皮膚の過伸展(図15■6),関節の過伸展など結合織異常が主である.顔貌はミオパチーに特徴的な顔貌で,歩行は一般に可能であるが,筋力低下によるゆっくりした歩行,ふらつきなどの歩行障害がみられる.筋力低下による側彎症,前彎症が認められる患者が多い(図15■7).関節の変形も特徴的で,おそらく筋力低下,関節の過伸展などによるものと思われる(図15■8). けいれんを合併する症例がまれにみられるが,精神運動発達は正常か軽度遅延している程度である.繰り返す尿路感染,下痢を合併する患者も多く,鼠径ヘルニアを合併することもある.症状の出現,程度は患者により,かなり異なる.ATP7A蛋白の残存活性の程度によるためと考えられる27).同一家系で同じ変異の患者でも,症状はMenkes病症状からオクシピタル・ホーン症候群症状まで,症状の程度は様々である家系が報告されている10,28,29). Beyensらは,自験例およびこれまでの報告例をまとめて,それぞれの症状の頻度を報告している(表15■2)7).表15■2は患者で本症特有の症状の有無を確認するのに役立つ.15 オクシピタル・ホーン症候群45血液MTGolgi体ATP7AATOX1(HAH1)CTR1a 正常細胞C末端テロペプチドテロペプチドらせん部分リジンまたはヒドロキシリジンリジンまたはヒドロキシリジン分泌銅酵素MTMTMTC末端テロペプチドらせん構造部分架橋形成過程α1α2α3LOX-H2O血液MTMTGolgi体MTATOX1(HAH1)MTCTR1b 正常細胞架橋分泌銅酵素(LOX, DBH)MTMTMTMTMTMTMTMTMTMTMT症状

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