新生児マススクリーニングガイド対象疾患等診療ガイドライン
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(250~750μmol⊘L)(1,000μmol⊘L以上)(500~1,000μmol⊘L)4⊖ヒドロキシフェニルピルビン酸二酸素添加酵素4⊖ヒドロキシフェニルピルビン酸二酸素添加酵素ホモゲンチジン酸二酸素添加酵素(5~15 mg⊘dL)(250~750μmol⊘L)表2■1高チロシン血症まとめ図2■2高チロシン血症の診断のフローチャートμmol/Lの高度上昇,高チロシン血症3型では,血漿チロシン>500〜1,000μmol/Lの中等度上昇になることが多い.3 特異的検査①血中・尿中アミノ酸分析②尿有機酸分析・高チロシン血症1型サクシニルアセトンの排泄増加,4■ヒドロキシフェニルピルビン酸,4■ヒドロキシフェニル乳酸および4■ヒドロキシフェニル酢酸の排泄増加・高チロシン血症2型サクシニルアセトンの排泄正常,4■ヒドロキシフェニルピルビン酸,4■ヒドロキシフェニル乳酸 一部地域ではチロシン高値を指標として新生児マススクリーニング(NBS)の対象とされているが,多くは対象疾患となっていない.NBS施行時に,血中チロシン値が高値になることはまれであるため,無症状の時点では見逃されやすい.高チロシン血症1型では,早期のNTBC投与とチロシン制限により,肝不全・肝硬変の進行を抑えることができるため,NBSによる早期発見の重要性が増すと予想される26■28).感度,特異度からは,血中チロシン値の計測よりも尿中サクシニルアセトンの計測がよりよい検査法である.この方法によって症状が出現していない症例に対しても治療が可能となる.1 確定診断 NBSで血中チロシンが高値であった場合,血漿アミノ酸分析および尿中有機酸分析(サクシニルアセトン)にて確定診断を行う.2 診断確定までの対応初診時に無症状であっても,血液検査項目で凝固能異常や低アルブミン血症,黄疸,トランスアミナーゼの上昇があれば,入院管理にて検査を進および4■ヒドロキシフェニル酢酸の排泄増加・高チロシン血症3型サクシニルアセトンの排泄正常,4■ヒドロキシフェニルピルビン酸,4■ヒドロキシフェニル乳酸および4■ヒドロキシフェニル酢酸の排泄増加③酵素活性あるいは遺伝子解析における異常❶ 疑診1.のうち1項目以上かつ2.の①を含めた2項目以上を満たす場合,高チロシン血症が疑われ,確定診断のための検査を行う.❷ 確定診断診断の根拠となる3.の②で疾患特異的所見を認めるとき,確定診断とする.3.の③によって,できれば確定診断するのが望ましい.めていく.フェニルアラニン・チロシン除去粉乳(雪印S■1)を用いて栄養管理を行う.3 診断確定後の治療❶ 薬物治療(高チロシン血症1型)ニチシノン(NTBC;オーファディン®)投与.診断確定後は速やかにNTBCの投与を開始する.常に食事療法と併用する必要がある.❷ 食事療法(高チロシン血症1型,2型,3型)血中チロシン値をコントロールするため,低フェニルアラニン・低チロシン食により蛋白摂取制限を行いながら,フェニルアラニン・チロシン除去粉乳(雪印S■1)を併用し,必要な蛋白,栄養および熱量(エネルギー)を確保する.必要な蛋白およびエネルギー量は,国際連合食糧農業機関/世界保健機関/国際連合大学(FAO/WHO/UNU)の推奨している蛋白およびエネルギー摂取量を参考にする(巻末資料).新生児・乳児期は,母乳や一般育児用粉乳とフェニルアラニン・チロシン除去粉乳(雪印S■1)を併用し,必要な蛋白,栄養および熱量を確保する.初期は週に2〜3回,血漿アミノ酸分析を行い,特殊ミルク量,食事量を調節する.病型遺伝形式血漿チロシン濃度常染色体高チロシン血症1型潜性(劣性)常染色体高チロシン血症2型潜性(劣性)常染色体高チロシン血症3型潜性(劣性)常染色体ホーキンシン尿症顕性(優性)常染色体アルカプトン尿症潜性(劣性)肝障害に伴う高チロシン血症新生児一過性高チロシン血症ビタミンC欠乏甲状腺機能亢進食餌性原疾患によるなしなし軽度上昇フマリルアセト酢酸加水分解酵素(FAH)高度上昇チロシンアミノ基転移酵素中等度上昇一過性軽度上昇様々軽度様々軽度様々軽度欠損酵素重度の肝不全,嘔吐,出血,尿細管障害,低血糖,ガラクトース代謝異常,神経症状,肝細胞癌精神遅滞,皮膚の異常角化,角膜びらん,潰瘍失調,けいれん,軽度の発達遅滞一過性発育遅延,食思不振,成長障害,アシドーシスアルカリ化した尿が暗褐色を呈する尿.20歳台からの関節炎,30歳台の組織の色素沈着,40歳台での大動脈拡張,大動脈弁や僧帽弁の閉鎖不全症,腎結石原疾患による無症状または不活発原疾患によるおもな症状2 高チロシン血症(1型,2型,3型)67血漿メチオニン値 > 130μmol/L尿中有機酸分析・サクシニルアセトン尿中上昇あり尿中上昇なし高チロシン血症1型血漿チロシン値 >200μmol/L肝炎,肝不全,シトリン欠損症も含むSLC25A13遺伝子解析異常ありシトリン欠損症血漿メチオニン値 ≦ 130μmol/L尿中有機酸分析・4-ヒドロキシフェニルピルビン酸・4-ヒドロキシフェニル乳酸・4-ヒドロキシフェニル酢酸尿中上昇なし尿中上昇あり血漿チロシン値>1,000μmol/L遺伝子解析または酵素活性測定異常あり高チロシン血症2型血漿チロシン値≦1,000μmol/L異常なし遺伝子解析または酵素活性測定異常あり高チロシン血症3型新生児マススクリーニング(NBS)で疑われた場合

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