新生児マススクリーニングガイド対象疾患等診療ガイドライン
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❶ 確診例・ ①〜④を満たすもの.・ ①,②を満たし,③のうち3β■hydroxy■Δ5■bileacidsか3β■monohydroxy■Δ5■bile acidsを多量に検出するもの(ただし,■■■■■■もしくは■■■■■■の遺伝子解析を行うことが望ましい).の酵素による代謝のステップを得て,複合体シリーズを形成しつつ,合成される.この代謝経路のいずれかに障害がある場合,正常な胆汁酸は産生されず,中間代謝産物である異常胆汁酸や胆汁アルコールが蓄積することになる.胆汁アルコールは下等脊椎動物におけるおもな胆汁成分とされているが,胆汁酸の中間代謝産物として人でも尿 現在8種類の疾患が報告されており,遺伝形式はすべて常染色体潜性遺伝(劣性遺伝)である.発生頻度は原因不明の胆汁うっ滞症の1〜2%前後と推測される.1 臨床病型❶ 新生児胆汁うっ滞型典型的な症状は,出生時から続く黄疸,肝腫大,灰白色便(無胆汁便),(ビタミンK欠乏性の)出血傾向などである.5β■Reductase欠損症とoxys-terol 7α欠損症はすべてこの型になる.無治療であれば,急速に肝硬変へ進展し死亡する.3β■HSD欠損症は前述の2疾患に比べ,進行は比較的緩徐だが,大部分はこの型となる.乳児期に肝硬変となることはまれだが,同様に無治療であれば,肝硬変へ進展し死亡する.❷ 慢性肝疾患型肝硬変の程度によって症状は異なるが,典型的な症状は易疲労感,黄疸,腹水,脾腫,出血傾向,胃食道静脈瘤に伴う吐血や黒色便などである.3β■HSD欠損症のなかには,胆汁うっ滞性肝障害 直接ビリルビンが高値となる胆汁うっ滞性の高ビリルビン血症や進行性の肝障害が存在するにもかかわらず,総胆汁酸値が正常値または低値である場合は強く疑う必要がある.1 血液検査 胆汁うっ滞性肝障害(ALTと直接ビリルビンの中や胆汁中に微量に検出されることがわかっている. 正常な胆汁酸の産生がなされないと,胆汁の流量が減少し,腸管での脂肪と脂溶性ビタミンの溶解が減少する.胆汁酸合成障害の際に生じる異常胆汁酸や胆汁アルコールの蓄積は肝細胞に対して毒性をもつため,肝障害を引き起こす.の進行が緩徐で,幼児期以降に原因不明の慢性肝疾患・肝硬変から診断されるケースもある. わが国から慢性肝疾患型で報告された3β■HSD欠損症の1例は,5歳時からのビタミンK欠乏に伴う難治性鼻出血を契機に診断に至った.アメリカからの報告では,成人期に診断された3β■HSD欠損症もある.2 主要症状および臨床所見 疾患により発症時期は様々であるが,疾患1〜7は乳児期,小児期に発症するとされている.胆汁酸合成障害と異常胆汁酸による肝毒性により,新生児胆汁うっ滞症,神経障害,進行性の肝障害などを呈する.乳児早期には,他の胆汁うっ滞症をきたす疾患と同じく,ビタミンK依存性凝固異常を起こしやすい.肝障害が進行して肝硬変となれば,凝固異常,低アルブミン血症,血球減少などを認める.疾患8は新生児,乳児期に症状を認めた報告はなく,成人において高コレステロール血症を起こすことが知られている.上昇)を認めるにもかかわらず,疾患1〜4では血清γ■GTPが正常(まれに軽度上昇)かつ血清総胆汁酸値は正常である註).疾患5,6では,血清rGTPは正常かつ血清総胆汁酸値が高値.疾患7では血清rGTP,総胆汁酸値ともに高値を示す.註:異常胆汁酸が増加するにもかかわらず,血清総胆汁酸値が正常になる理由は,通常の血液検査b)http://www.ctx-guideline.jp/guideline/では異常胆汁酸は水酸基の構造変化が起こるため同定できず,3α水酸基を有する正常胆汁酸のみ検出する.その結果,正常の胆汁酸生合成ができない疾患1〜4では通常の血液検査では血清総胆汁酸値が正常となる.1 GC⊘MSによる血清,尿中胆汁酸分析 疾患特異的異常胆汁酸を検出した場合,これを定量する.2 遺伝子解析 現在は,小児期発症の胆汁うっ滞性肝疾患を対象とした多施設前向きレジストリ研究(CIRCLe)1 胆汁うっ滞症 胆道閉鎖症や新生児肝炎,進行性家族性肝内胆汁うっ滞症(PFIC),シトリン欠損症など,黄疸と肝障害をきたす疾患が鑑別にあがる.臨床症状での鑑別は困難で,γ■GTPと血清総胆汁酸値や 国内で患者を複数の患者を認める疾患1〜4について診断基準を示す.1 疾患1,2,4① 出生時から続く黄疸,肝腫大,灰白色便(無胆汁便)を認める.② 血液検査で,トランスアミナーゼと直接ビリルビンの上昇を認めるにもかかわらず,γ■GTPと血清総胆汁酸値が正常(もしくは軽度上昇).③ 血清や尿中の胆汁酸分析で,異常胆汁酸である3β■hydroxy■Δ5■bile acids,3■oxo■Δ4■bile2 画像検査 本疾患に特異的な画像所見はない.腹部超音波,腹部CT・MRIなどで,肝腫大や脾腫を認める.肝障害が進行して肝硬変を認める.が進められており,症例登録をすることで,尿中胆汁酸分析と遺伝子パネル解析を依頼することが可能となっている. また,疾患3については血清コレスタノール測定と■■■■■■■遺伝子検査を「脳腱黄色腫症の実態把握と診療ガイドライン作成に関する研究班」のHPからオーダー可能であるb).尿中胆汁酸分析で鑑別が可能である.2 甲状腺機能低下症 高コレステロール血症を認める症例では,甲状腺ホルモンを計測し鑑別する必要がある.acids,3β■monohydroxy■Δ5■bile acidsのうち,いずれかを多量に検出する.④ 遺伝子解析で,■■■■■■,■■■■■■(■■■■■■),■■■■■■のいずれかの遺伝子に,病的変異をホモ接合体もしくは複合ヘテロ接合体で認める.17 先天性胆汁酸代謝異常症23診断の基準参考となる検査所見診断の根拠となる特殊検査鑑別診断診断基準

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