新生児マススクリーニングガイド対象疾患等診療ガイドライン
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❶ 確診例・ ①〜⑤を満たすもの.・ ①もしくは②を満たし,④,⑤を満たすもの.❷ 疑診例・ ①かつ/または②を満たし,④を満たすもの1) Heubi JE, et al.:Inborn Errors of Bile Acid Metabolism. 2) Sundaram SS, et al.:Mechanisms of disease:inborn errors of bile acid synthesis. Nat Clin Pract GastroenterolHepatol 2008;5:456■468.3) Mizuochi T, et al.:Successful heterozygous living donor liver transplantation for an oxysterol 7α■hydroxylasedeficiency in a Japanese patient. Liver Transpl 2011;17:1059■1065.❷ 血液検査項目・ ①もしくは②を満たし,④を満たすもの.❷ 疑診例・ ①,②を満たすもの.・ ③を満たすもの.2 疾患3詳細は「脳腱黄色腫症診療ガイドライン」を参考にされたい10).① 新生児期,乳児期に黄疸,肝腫大,灰白色便(無胆汁便)を認める.② 知的障害,てんかん発作,白内障,難治性下痢,冠動脈疾患などを認める. 胆汁うっ滞による肝障害の程度と治療開始時期 新生児マススクリーニング(NBS)の対象疾患 疾患1〜4では薬物療法として,一次胆汁酸製剤であるコール酸,ケノデオキシコール酸の単剤または併用療法が行われている.長期的な使用での有効性,安全性が認められているのはコール酸単剤投与であるが,わが国ではコール酸が医薬品として認可されていないため,ケノデオキシコール酸(チノ®カプセル)単剤投与が治療として施行されている.チノカプセル® 5〜15 mg/kg/日(最大600 mg/日)を分2〜3で食後投与する.効果は,コール酸③ 血液検査で,トランスアミナーゼとD■bilの上昇を認めるにもかかわらず,γ■GTPと血清総胆汁酸値が正常(もしくは軽度上昇).④ 血清コレスタノール高値⑤ 遺伝子解析で,■■■■■■■遺伝子に,病的変異をホモ接合体もしくは複合ヘテロ接合体で認める.により,重症度が変わってくる.ではない.め,根本的な治療にはならないが,肝細胞保護作用,抗炎症作用,利胆作用を期待して投与する. 脂溶性ビタミン補充,中鎖脂肪酸(MCTミルク,MCTオイル)による栄養管理を行う.と同等かそれ以上と考えられているが,高用量では肝細胞毒性があり,また妊婦には禁忌であるため,安全性ではコール酸に劣ると考えられている.3β■HSD欠損症と5β■reductase欠損症は,肝硬変が進行する前にコール酸やケノデオキシコール酸の治療を開始すれば,胆汁うっ滞性肝障害は改善し肝移植を回避できるが,生涯にわたる内服継続が必要である. 抱合不全型の疾患5,6ではウルソデオキシコール酸5〜15 mg/kg/日を投与するが,グリココール酸15 mg/kg/日の使用報告もある.現在では,新たな内服薬の治験も行われている(UMIN000041118). 肝硬変などにより内服治療が奏効しない場合は,肝臓移植が選択される.肝臓移植により酵素 急性期の肝障害が安定すれば外来フォローとなる. 乳幼児期は1か月に1〜2回,学童期は状態が安定していれば3か月に1回程度で定期診察を行う.1 フォローアップ項目❶ 身長,体重測定成長,発達を評価する.1 内服治療の継続 一次胆汁酸製剤の内服が生涯必要であり,怠薬により肝障害が再燃する可能性がある.思春期から青年期にかけて内服のコンプライアンスが落ちるおそれがあり,患者本人への疾患に対する教育を行うことが重要である. 肝臓移植後であれば,一次胆汁酸製剤は不要であるが,免疫抑制薬などの内服管理は基本的に生涯必要となる.2 飲酒アルコール摂取による肝障害を起こしやすい可能性があるため,控えたほうがよい.3 運動 基本的に運動制限は不要だが,就労における重度の肉体労働は避けることが望ましい.4 妊娠・出産 妊娠は可能だが,妊娠中に胆汁うっ滞症を起こが補充されるため根治術となりうる.常染色体潜性遺伝(劣性遺伝)のためヘテロ接合となる両親からの肝臓提供でも予後良好との報告がある.移植後は一次胆汁酸製剤の投与は不要となる.総ビリルビン,直接ビリルビン,トランスアミナーゼ,凝固能,γ■GTP,総胆汁酸,アンモニアなどの評価を行う❸ 画像検査年に1回は,腹部超音波にて肝臓の状態を確認する.❹ その他尿中胆汁酸分析を適宜評価する.しやすいとされているため,厳重な内服管理が必要である.ケノデオキシコール酸は妊婦には禁忌であるため,妊娠中はコール酸への変更する.5 医療費の問題 本疾患は小児慢性特定疾患(38)となっており,保険診療内の諸検査および薬物治療については難病制度に即した医療費助成制度が適応される.4) Seki Y, et al.:Two neonatal cholestasis patients withmutations in the SRD5B1(AKE1D1)gene:Diagnosis Clin Liver Dis 2018;22:671■687.17 先天性胆汁酸代謝異常症45文献重症度分類新生児マススクリーニング(NBS)で疑われた場合急性発作で発症した場合の診療 一次胆汁酸製剤であるコール酸,デオキシコール酸の投与を開始するが,急性期には,それに加えて,ウルソデオキシコール酸の投与を5〜15mg/kg/日で行う.ウルソデオキシコール酸は三次胆汁酸であり,一次胆汁酸とは置換されないた慢性期の管理フォローアップ指針成人期の課題

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