新生児マススクリーニングガイド対象疾患等診療ガイドライン
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1) Kinoshita T:Biosynthesis and biology of mammalianその他の頻度の高い症状」のうち1項目以上を満たしていれば遺伝子診断を行う.いずれの病型も Barthel Indexが85点(%)以下を重症とする. 本症は新生児マススクリーニング(NBS)の対1 治療❶ ビタミンB6(ピリドキシン)投与 C(非保険収載)てんかんを合併している症例では,通常の抗てんかん薬や治療では難治に経過することが多い.しかし,ビタミンB6(ピリドキシン)の投与がてんかん発作に著効する症例が報告されている23). 注意すべきは,ビタミンB6製剤の選択である.ピリドキサールリン酸は,GPI■APであるALPを確定診断のために遺伝子解析が必須である.象疾患ではない.系の補酵素である. まだ症例数が少なくエビデンスはないがGPI欠損が,こうした代謝経路の脆弱性を生じて,けいれん重積や急性脳症といった急激な悪化を引き起こす可能性は否定できない.急性増悪時に,上記のビタミン類の補充が有効な可能性もある.介して細胞内に取り込まれるため,IGDでは細胞内への取り込みが低下し,無効であると考えられる.一方,ピリドキシンは前述のALPを介さずに細胞内に取り込まれるために有効と考えられる.商品名:アデロキシン(丸石製薬株式会社)投与量:ピリドキシン10〜15 mg/kg/日分3で投与を開始.副作用などを確認した後に20〜30 mg/kg/日分3まで増量(体重が30 kg以上の症例では,最大投与量は,1日あたり700〜1,000 mgとしている).微量元素などを適宜,測定する.2 神経学的評価 重度心身障害の場合には,呼吸,循環,嚥下機能,胃食道逆流,便秘,栄養,排尿機能,てんかん,筋緊張,側彎・脱臼,皮膚など,一般的な重症心身障害児・者としての評価を行い,対症的治療を行う.必要があれば,脳波や画像検査も行う.5 医療費の問題 本疾患は指定難病となっており,保険診療内の諸検査および薬物治療については,難病制度に即した医療費助成制度が適応される.6 その他 成人後の健康管理については,症例経験が少なく,不明である.2) Murakami Y, et al.:Inherited GPI deficiencies:a newdisease with intellectual disability and epilepsy. No ToGPI■anchored proteins Open Biol 2020;10:190290.mini column3 GPIアンカー型蛋白(GPI⊖AP)であるアルカリホスファターゼ(ALP)は,細胞表面でビタミンB6の一つピリドキサールリン酸を脱リン酸化して細胞内に取り込める形のピリドキサールにし,細胞内に入ったピリドキサールは再びリン酸化されてピリドキサールリン酸となり,抑制性ニューロンにおいてγ⊖アミノ酪酸(GABA)合成酵素の補酵素として働く.細胞膜上のALPの発現が低下すると,細胞内のピリドキサールリン酸が不足し,GABA合成が抑制され,けいれん発作が誘発されると考えられる.ビタミンB6はGABA合成だけでなく様々なアミノ酸代謝にかかわっているので,ビタミンB6欠乏による代謝異常が起こる可能性がある.また,ビタミンB1,B2の吸収や細胞内への取り込みにもALPがかかわっているので,細胞内ビタミンの欠乏が病態にかかわっている可能性がある.1 一般的評価と栄養学的評価 患者の臨床像は,重度心身障害から軽度の知的障害のみで日常生活動作(ADL)は自立している症例まで,非常に多彩であるため,臨床像に応じて診療する.特異的な食事療法はないため,栄養学的評価も特別なものは不要である.重度心身障害で,経管栄養を行っている場合には,身長や体重を定期的に測定し,各種栄養指標やビタミン・1 食事療法を含めた治療の継続 特別な食事療法や根治療法は存在しない.ビタミンB6については,成人後の有効性や必要性の検討はなされていない.2 飲酒 飲酒の影響は未確認である.3 運動 運動可能な軽症例において,運動を制限する理由はない.4 妊娠・出産 妊娠・出産を経た症例の報告はないため,留意事項は不明である.18 先天性グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)欠損症67文献GPIアンカー型蛋白(GPI■AP)の欠損と病態重症度分類新生児マススクリーニング(NBS)で疑われた場合急性発作で発症した場合の診療 本疾患は,通常は慢性に経過する.しかし,国内で診断のついた52例のうち,3例がけいれん重積を機に死亡している.ビタミンB1,B2,B6,葉酸の細胞内への取り込みには,GPI■APがかかわっており,これらのビタミンは,それぞれ細胞内のエネルギー代謝や神経伝達物質の合成,DNA合成,アミノ酸合成といった,幅広い反応慢性期の管理フォローアップ指針成人期の課題

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