
日本先天代謝異常学会理事長
奥山 虎之
(国立成育医療研究センター 臨床検査部統括部長)
2020年3月、日本先天代謝異常学会の理事長に就任した国立成育医療研究センターの奥山虎之です。どうぞよろしくお願い申し上げます。
日本先天代謝異常学会(JSIMD)は1965年に小児代謝研究会として発足し、初代理事長:北川照男先生、第2代理事長:多田啓也先生、第3代理事長:衞藤義勝先生、第4代理事長:遠藤文夫先生・第5代理事長:井田博幸先生、第6代理事長:深尾敏幸先生が学会の発展に尽力されました。
私は、第7代理事長として、諸課題に取り組みます。まず、本学会組織を一般社団法人化します。また、学術面では、先進的な治療法の開発研究の推進、患者登録制度の維持発展、そして、早期診断を可能にするスクリーニング検査や特殊検査の充実に特に力を注ぎます。
現在欧米を中心に長足の進歩を遂げている遺伝子治療などの新しい先進的な治療法の臨床開発を推進します。特に、わが国から発信できる新しい治療法の開発研究を推進します。そのためには、基礎研究やトランスレーションリサーチができる医師や研究者だけでなく、医師主導治験などに積極的に取り組む若手医師や研究者を次世代のリーダーとして育成します。
先天代謝異常症のような希少疾患の臨床研究を推進するためには、充実した患者登録制度の維持発展が不可欠です。日本先天代謝異常学会には、すでにJaSMIn(Japan Registration System for Metabolic and Inherited Diseases)という登録制度があり、1500名以上の患者さんが登録されています。また、この登録制度は、患者さんとそのご家族と学会との貴重なコミュニケーションの場にもなっています。このJaSMInをさらに維持・発展させ、臨床研究のデータベースとして活用できるように整備したいと考えます。
治療法の発展により、早期診断体制の確立も重要課題となっています。これまで、先天代謝異常症の臨床診断の多くは、研究機関が研究の一環として行ってきました。この方法は、研究者が患者さんの診療に責任を持つというメリットもありますが、今後は、医療法を遵守し診療の用に供するための臨床検査としての整備も必要となります。
学会の諸活動を通して、新しい治療法や診断法が開発され、その結果として、病気に苦しむ患者さんやそのご家族に貢献できること、それが学会の本来のミッションです。皆様とともに、このミッションを果たしていきたいと考えます。そのためには、学会員の皆さんの力を結集する必要があります。なにとぞよろしくお願い申し上げます。