理事長挨拶

奥山虎之

日本先天代謝異常学会理事長
中村公俊

日本先天代謝異常学会(Japanese Society for Inherited Metabolic Diseases, JSIMD)の理事長を拝命いたしました中村公俊です。本学会は1965年に小児代謝研究会として発足し、1984年から日本先天代謝異常学会として学術集会が開催されるようになりました。これまでに、北川照男先生、多田啓也先生、衞藤義勝先生、遠藤文夫先生、井田博幸先生、深尾敏幸先生、奥山虎之先生と、7名の先生方が理事長として学会の発展に尽力されており、私は第8代目の理事長となります。2022年に一般社団法人となり、2025年には国際先天代謝異常学会(ICIEM2025)を主催することが決定しています。

本学会ではこれまでに組織改革、学会発展への取り組みが行われてきました。その結果、一般社団法人化、学会事務の外部委託、ニュースレターの発行、さらに患者レジストリー、特殊検査の供給などが進みました。しかしまだ多くの課題も残されています。先天代謝異常症は希少難病であり、診断法、治療法が確立している疾患はその一部にすぎず、患者会との連携や支援も十分とは言えません。また、アジア各国の先天代謝異常症の専門医師は少なく、JSIMDが主導するアジアを代表する枠組みが必要です。ICIEM2025の先を見越した国際交流の戦略を作らなくてはなりません。

これらの課題解決のために本学会においては、①国際プレゼンスを向上させ、②次世代リーダーの育成とジェンダーギャップの解消を目指し、③難病診療におけるレジストリー構築、基礎・臨床研究の促進を行う必要があります。国際先天代謝異常学会の構成メンバーからは、アジアを代表する学会としての組織づくりを要請されており、丁寧な合意形成が求められます。また、学術集会や学会セミナーなどで活躍されている次世代の先生たちが海外に飛躍できる機会を作ることが必要です。さらに④関連学会、研究班、患者家族会、診断や治療に関わる多くのみなさまとの情報共有し、⑤学会員と患者様にとって持続可能な診療の支援を目指します。

2010年に開催された第1回アジア先天代謝異常学会議(ACIMD)は、アジア各国の先天代謝異常学の代表を集めた初めての国際学会でした。私はこの事務局を担当し、各代表と顔の見える関係を築きました。2005年から開催されている日本先天代謝異常学会セミナーでは、第1回から第3回のセミナー事務局を務めて200名以上が集まるセミナーとなるお手伝いをし、第16-18回セミナーでは、新型コロナウイルス感染症拡大の中で、実行委員長としてオンデマンド配信方式へと切り換えて、3年間でのべ約2000人が受講するという新しい在り方を提案しました。2022年には第63回学術集会を担当させていただきました。このように、学会活動の中でお会いした多くのみなさまに育てていただいたと感じております。少しでもそのお返しができるように、微力ながら取り組んでまいります。

私は理事長として、これらの経験と方針に基づいた安定した積極的な学会運営を目指します。本学会のさらなる発展を目指し、すべての課題解決にオールジャパンの組織として精力的に取り組みたいと考えています。なにとぞよろしくお願いいたします。

2022年12月1日

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