- 令和2年度診療報酬改正に関して(日本先天代謝異常学会要望の結果)
令和2年度診療報酬改正に向けて、日本先天代謝異常学会は、参考資料1の要望を出していました。その結果、血中ガラクトース検査だけは据え置きで増点になりませんでしたが、残りの要望はほぼ認められました。2年前の血中カルニチン2分画、血中遊離脂肪酸に続き、日本先天代謝異常学会の要望が認められ、非常にうれしく思います。
わかりにくい部分がありますので、以下に解説をさせていただきます。
日本先天代謝異常学会社会保険委員長 窪田 満
- 尿中有機酸分析、血中極長鎖脂肪酸、タンデムマス分析について
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「参考資料2_診療報酬改正.pdf」をご覧下さい。その7ページ目に、「ガラクトース」が130点のままであることが示されています。また、ガラクトース血症の遺伝学的検査への追加もなりませんでした。
次に、10ページ目ですが、「8 先天性代謝異常症検査」が、以下の様に変更されています。
8 先天性代謝異常症検査
イ 尿中有機酸分析1,141点
ロ 血中極長鎖脂肪酸1,141点
ハ タンデムマス分析1,141点
ニ その他1,141点注1 イ、ロ及びハについては、別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関において行われる場合に、患者1人につき月1回に限り算定する。
その施設基準は「参考資料3_施設基準.pdf」の86ページにあります。
2 ニについては、別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関において、当該保険医療機関内で検査を行った場合に、患者1人につき月1回に限り算定する。
第18 の1の7 先天性代謝異常症検査
1 先天性代謝異常症検査に関する施設基準
上記の、「児童福祉法第19 条の3第1項に規定する指定医」とは、小児慢性特定疾病の指定医のことです。児童福祉法第19 条の3第1項を以下に転載します。
(1) 小児科を標榜している保険医療機関であること。
(2) 児童福祉法第19条の3第1項に規定する指定医である常勤医師が1名以上配置されていること。
2 届出に関する事項
先天性代謝異常症検査の施設基準に係る届出は、別添2の様式23の6を用いること。
(「参考資料3_施設基準.pdf」の後ろのほうにあります)
第十九条の三 小児慢性特定疾病児童等の保護者(小児慢性特定疾病児童等の親権を行う者、未成年後見人その他の者で、当該小児慢性特定疾病児童等を現に監護する者をいう。以下この条、第五十七条の三第二項、第五十七条の三の三第二項及び第五十七条の四第二項において同じ。)は、前条第一項の規定により小児慢性特定疾病医療費の支給を受けようとするときは、都道府県知事の定める医師(以下「指定医」という。)の診断書(小児慢性特定疾病児童等が小児慢性特定疾病にかかつており、かつ、当該小児慢性特定疾病の状態が第六条の二第二項に規定する厚生労働大臣が定める程度であることを証する書面として厚生労働省令で定めるものをいう。)を添えて、都道府県に申請しなければならない。
前回改定の1,176点から減点になりましたが、非常に大きな進歩となります。尿中有機酸分析、血中極長鎖脂肪酸、タンデムマス分析は、「小児科を標榜していて小慢の指定医の常勤医が1名以上いる病院」で検体採取されれば、民間検査会社を含め、どこで検査をしても1,141点算定できるということになりました。
これは、闇雲に高額な検査が提出されるのを防ぐため、検査する側のハードルは下げましたが、検体採取側の病院のハードルを上げたということです。対象疾患がすべて小慢疾患であり、整合性はあると思います。また、日本先天代謝異常学会の会員の先生方が所属しているような病院はこの条件を満たすと思われますので、届出さえしていただければ、全く問題ないと考えています。
「二 その他」に関しては、主にムコ多糖分析が想定されていますが、「当該保険医療機関内での検査」と逆にハードルが上がってしまいました。これは、質量分析装置とことなり、医薬品医療機器等法で医療機器として認められていない検査であることが理由となっています。そのため、SRLでのムコ多糖分析は保険診療になりません。
わかりにくいのですが、「〜においておこなわれる検査」は、検査のための検体採取のことを指し、「当該保険医療機関内で検査を行った場合」は検査そのものをその医療機関内で行うことを指します。
- 遺伝学的検査について
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「参考資料4_留意事項.pdf」の259ページ目の「オ」の項目をご覧下さい。非常に多くの先天代謝異常症が追加されました。なお、258〜259ページに、以前から認められている疾病が記載されています(個人的には、「先天異常症候群」の追加が気になっています。これなら、何でも遺伝子検査可能になります)。具体的には先天代謝異常症としては、以下の疾患が追加されました。
CPT2欠損症、CACT欠損症、OCTN-2異常症、シトリン欠損症、非ケトーシス型高グリシン血症、β-ケトチオラーゼ欠損症、メチルグルタコン酸血症、グルタル酸血症2型、セピアプテリン還元酵素欠損症、芳香族L-アミノ酸脱炭酸酵素欠損症、瀬川病、リジン尿性蛋白不耐症、副腎白質ジストロフィー、グルコーストランスポーター1欠損症、肝型糖原病(糖原病Ⅰ型、Ⅲ型、Ⅵ型、Ⅸa 型、Ⅸb 型、Ⅸc 型、Ⅳ型)、筋型糖原病(糖原病Ⅲ型、Ⅳ型、Ⅸd 型)
ここで謝罪しなければなりません。筋型糖原病に、糖原病V型、糖原病VII型が⼊っていませんでした。日本先天代謝異常学会の評議員の先生方にアンケートを行い、確認したつもりでしたが、抜けておりました。次回、令和4年度の診療報酬改正で追加を要望したいと思います。
なお、新しい疾患に関しては、ライソゾーム病と同様の施設基準を満たしている必要があります(258ページの疾患の場合は不要です)。「参考資料3_施設基準.pdf」の83ページと後ろの方の様式23をご覧下さい。重要なことは、遺伝カウンセリングを要する診療に係る経験を3年以上有する常勤医師がいることと、当該保険医療機関における遺伝カウンセリングの年間実施件数が20例以上(新規届出の場合は届出前3か月間の件数が5例以上)であることです。これは、多くの大学病院や小児専門病院なら問題ないと思いますが、一般病院からの検査は困難になるかもしれません。
- 参考資料